Protect the Ideal of Multilateral Cooperation at the G-7 Summit

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大戦後の国際秩序を主導してきた米国が、自国の利益のみを優先する行動を繰り返す。この難局をどう乗り越えて、多国間協調の未来をつなぐか。

 ことしの主要7カ国首脳会議(G7サミット)の主題は、そこにあったといえる。議長国フランスのマクロン大統領は、会議の決裂を食い止める責任の重さに悩んだことだろう。

 異例に短い「首脳宣言」が、難渋ぶりを映し出した。G7が世界に促してきた「自由貿易」は、言葉すらない。米政府が背を向ける気候変動対策は、最初から文書の枠外だった。

 問題の核心であるトランプ大統領と、マクロン氏はあえて共同会見を開き、会議を締めくくった。それも米国の離反を防ぐ苦肉の策だったのだろう。

 経済論議の主舞台としてはG20に役割を譲ったとはいえ、自由と民主主義を尊ぶ理念については、今もG7ほどの発信力を持つ枠組みは見当たらない。

 その意味では今回、成果がないわけではない。トランプ政権が対立を深めるイランの外相が招かれ、各国が対話による解決を促した。米国発の問題の調整に、G7が取り組む実例になるかもしれない。

 歴史をたどれば、サミットの成り立ちは米国の覇権の衰えに連動したものだった。ドルショックと石油ショックが国際経済を揺さぶり、米国がベトナム戦争に敗れた70年代半ば、主要各国がフランスに集った。

 冷戦下で「西側」の結束を示す狙いがあったとともに、米国だけでは支えきれない国際経済を安定させ、秩序を守る多国間主義の発露だった。米国の指導力がいっそう陰る今、欧州・カナダ・日本による秩序維持の機能が改めて問われている。

 もとより気候変動、テロ、移民・難民問題など、地球規模の連携がなければ対処できない課題が山積する時代である。

 米欧と中国ロシアとの対立で国連が十分な機能を果たせず、新興国も不安定な中で、G7による訴えには意味がある。今回の会合でも、アマゾン森林火災を世界が共有すべき問題として提起したのが好例だろう。

 G7は来年、さらなる試練に直面する。大統領選挙さなかの米国が議長国になるからだ。

 トランプ氏はかねて、ロシアの復帰を唱えているが、認めるべきではあるまい。隣国ウクライナのクリミア半島を一方的に併合したロシアは、法の支配という国際社会の重い原則を共有していないからだ。

 自国第一主義が蔓延(まんえん)する世界に勝者はいないのは歴史の教訓だ。先進民主主義国が足並みをそろえて理念を掲げる意義を見失ってはならない。

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