US Air Strikes in Iraq Show Commitment to Stability

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米のイラク空爆 情勢安定へ本気度を示せ(8月14日掲載)

 オバマ米政権がイラクのイスラム過激派「イスラム国」に対する空爆に踏み切った。しかしこの空爆で過激派を一掃できないことは米国も認めている。米国はイラクの新しい挙国一致政権を支援し、国連などと協調してイラクの安定を取り戻すためこれまで以上に政治、軍事両面で強力に取り組まねばならない。

 軍事介入に消極的だったオバマ大統領が今回空爆に踏み切ったのは、第一に米国市民の安全を守る必要があったこと、第二に宗教的少数派が虐殺の危機にひんするという緊急性があったからだ。

 米国のイラク侵攻を批判して大統領に当選したオバマ大統領はイラクに再び軍事介入することを嫌い、国内外の介入要請を拒絶してきた。しかしイスラム国が今月初めから北部クルド人地域への攻勢を強め、中心都市アルビル周辺の町が制圧されるに至って空爆を決断した。

 アルビルには米国の領事館や軍事顧問団の拠点が置かれており、放置しておけば、米大使らが殺害されたリビアの領事館襲撃の二の舞いになると恐れたためだ。

 また宗教的な少数派のヤジド派住民数百人がイスラム国に虐殺され、山岳地帯に逃れた約4万人が飢えと水不足で死の瀬戸際にあったこともオバマ政権を動かした。

 空爆で、イスラム国の進撃に急ブレーキがかかり、クルド人勢力がアルビル周辺の町を奪還した。しかし限定的な空爆ではイスラム国を壊滅させることはできない。むしろ勢力を封じ込めることによって、占領地が過激派の聖域になり、欧米へのテロの出撃基地になる懸念が現実味を帯びてしまう。

 イスラム国を弱体化させるためには、軍事、政治両面の一体的な政策が不可欠である。武力行使だけで長期的な安定を図れないことは、米国のイラク侵攻の失敗が如実に示している。

 イラクのマリキ政権が身内のシーア派を偏重し、少数派のスンニ派やクルド人を軽視したことが、イスラム国の台頭を招く一因になったのは明白である。

 このため米国はマリキ政権に代わる挙国一致政府の発足を求め続け、このほどアバディ連邦議会副議長が新首相候補に指名された。しかしマリキ首相が反発し、クーデターの懸念も出ているのは憂慮すべき事態だ。

 米国はこうしたイラクの内紛を許してはならない。オバマ政権は困難な外交問題に逃げ腰のきらいがあるが、前向きで包括的なイラク戦略を速やかに打ち出すべきだ。

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