Florida Shooting: This Time, Cut the Chain of Violence with Gun Control

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 またも米国で凄惨(せいさん)な事件が起きてしまった。米フロリダ州オーランドのナイトクラブで男が自動小銃などを乱射し、少なくとも49人が死亡、50人以上が負傷した。米国史上最悪の銃犯罪に悲しみと憤りを禁じ得ない。

 オバマ大統領は「テロ行為」と非難し、脅威に対抗するために米国は団結すると強調した。過激派組織「イスラム国」(IS)は犯行声明を発表したが、事件との関連性には不明な点がある。同性愛者が集うナイトクラブを狙った憎悪犯罪(ヘイトクライム)の可能性も強く疑われる。事件の背景を徹底解明し暴力の連鎖を断たなければならない。

 何より急ぐべきは銃規制だ。

 容疑者は大手警備会社に勤め銃器の取り扱いに慣れていたという。イスラム過激思想に傾倒し、同僚に扇動的発言をしたとして、連邦捜査局(FBI)がこれまでに2回事情聴取していた。それでも銃器が合法的かつ容易に手に入る環境がある限り犯罪を防ぐのは難しい。

 米国では年間3万人以上が銃によって命を落としている。昨年12月にも、ISに感化された夫婦がカリフォルニア州の福祉施設で乱射し、14人が亡くなった。学校や教会などで罪のない市民が犠牲になる悲劇を何度も繰り返しながら、一向に対策が進まない現状を深く憂慮する。

 オバマ氏はこれまで、銃規制強化を最重要課題として訴えてきたが、保守派の強固な抵抗に阻まれている。3年前には、全ての銃購入希望者に対する犯罪歴調査を義務付け、自動小銃など攻撃用銃器の製造や販売を禁止する法律の制定を議会に求めたが、多数派の野党共和党だけでなく民主党の一部からも理解が得られなかった。

 合衆国憲法修正第2条は「国民が武器を保有し携行する権利は侵してはならない」として武装の権利を認めており、有力ロビー団体「全米ライフル協会」(NRA)などはそれを盾に、銃で自衛する権利が保障されていると主張。西部開拓の歴史から、家族は自らの力で守るという文化は今も色濃く残る。

 だが、今回使われた殺傷力の高い自動小銃などは、自衛の手段をはるかに超えているといえよう。合法的な流通が、暴力を後押ししている現実を重く受け止めるべきだ。

 オバマ氏は今年1月、インターネットを通じた銃売買に身元調査を義務付けるなど大統領権限に基づく銃規制強化策を発表した。規制に慎重な議会の審議を避けるため、現行法の枠内で極力対応しようと腐心したが、これでも全く不十分だ。

 「罪のない人々が銃弾に倒れることが、普通であるはずがない」。オバマ氏は以前、こう訴えた。この言葉をあらためて胸に刻み、脅威への対抗策を足元から一歩でも進めなければならない。安全を求めて武器に依存し、より危険を高める愚。それを断ち切るための社会の大転換が求められている。

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