Close US-Europe Collaboration Is Indispensable to Global Stability

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米国のペンス副大統領や主要閣僚が相次ぎ訪欧し、トランプ政権誕生でぎくしゃくした欧州との関係修復に動いた。強い米欧同盟の継続は日本にも重要だ。大統領自身が不規則な発言を控え、早く安定した外交姿勢を打ち出して不安を解消してほしい。

 欧州連合(EU)は「ドイツのための乗り物」であり、北大西洋条約機構(NATO)は「時代遅れ」。トランプ氏は就任前にこうした冷ややかな発言を繰り返し、欧州側の強い反発を招いていた。

 米側からは今回、副大統領のほかティラーソン国務長官、マティス国防長官がそれぞれ欧州を訪れ、EUやNATOとの関係を重視する姿勢を示した。米欧間の亀裂が広がっていくことへの危機感があったのだろう。

 トランプ政権の幹部が総じて冷静で妥当なメッセージを伝えたことを歓迎したい。欧州側からも評価の声が聞かれた。

 だが、これで米国への懸念を十分ぬぐえたとはいえない。米政権内で外交方針がきちんと共有されているのか確かでないからだ。トランプ氏は物議をかもす発言を続けており、世界情勢への認識や考え方にも不明確なところが多い。

 例えばロシアへの対処のしかたは不透明だ。ティラーソン長官はロシアとの外相会談でウクライナ東部の停戦合意を順守するよう求めるなど、対ロ関係で慎重な姿勢を示したとされる。

 ロシアとの関係改善に前向きな姿勢を見せてきたトランプ氏と認識は一致しているのだろうか。

 力による国際秩序の現状変更を辞さないロシアは、米欧の足並みが乱れればつけ込む可能性が大きい。トランプ氏は対ロ政策を欧州とすりあわせ、効果的に協力する体制を築いてもらいたい。

 米欧の結束に向けた課題は多い。マティス長官はNATOの会合で、国防費の支出水準が低い加盟国の取り組み強化を要求した。欧州側が応じなければ米欧対立に発展する恐れがある。

 独仏などでは今年、重要な選挙があり内政の不透明感が増す。欧州側も求心力を保つのに苦労している状況だ。

 米欧同盟が揺らげば世界は不安定になり、影響は日本にも及ぶ。米政権の対中姿勢もなおはっきりしない。トランプ氏が世界の現実を正しく見つめ、理にかなった外交路線を軌道に乗せるよう、日欧も連携していく必要がある。

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