US-Russian Relations Restoration

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「冷戦後最悪」と言われる米ロ関係の修復に向けた一歩にはなったようだ。トランプ、プーチン両首脳の初顔合わせ。ただし、抜本的な関係改善には「ロシアゲート」疑惑の解明が欠かせない。

 両首脳がシリア南西部での停戦で合意したのは一定の成果だ。

 七年目に入ったシリア内戦は、四十万人以上の死者を出した。国外に逃れた難民、国内避難民ら家を追われた人々は人口の約三分の二に相当する千二百万人に上る。

 こうした最悪の人道危機を終わらせるために米ロは連携すべきだ。まずは、停戦が順守されるようアサド政権や反体制勢力ら当事者に影響力を発揮してほしい。

 昨年の米大統領選をめぐり米当局は、ロシアがトランプ氏の有利になるようハッカー攻撃によって介入したと断定した。トランプ陣営もこれに結託していたのではないかというロシアゲート疑惑が浮上した。

 会談ではこの問題も取り上げられ、ティラーソン米国務長官によると、両首脳は「強硬かつ長時間」渡り合ったという。一方、ラブロフ・ロシア外相は疑惑を否定したプーチン氏の説明をトランプ氏は受け入れたと報道陣に語った。

 トランプ氏は疑惑を否定し続けてきた。会談の前日も「本当のところは誰にも分からない」とあいまいな発言をした。こうした言動からすると、トランプ氏が強く抗議したとはにわかに信じ難い。

 欧米はロシアによる選挙介入に警戒感が強い。民主主義体制の根幹を毀損(きそん)する行動であり、看過できるものではないからだ。

 マクロン仏大統領は五月、共同会見したプーチン氏を横に置いて、仏大統領選挙中にロシアの国営メディアが「虚偽を流すプロパガンダを展開した」と非難した。

 ロシア側は今回の首脳会談が関係改善の突破口となったと高く評価している。歴代の米大統領とは違って、人道問題でうるさいことは言わずに取引を図ろうとするトランプ氏は都合が良いのだろう。

 クリミア併合に伴う欧米の対ロ経済制裁を解除させ、最終的には併合も認めさせてウクライナ問題にけりをつけたい思惑がロシアにはある。

 米ロが立場の違いを超えて手を取り合うことを国際社会も期待する。だが、ロシアゲートは米ロ協調の足かせになっている。捜査当局はトランプ氏の司法妨害疑惑も調べている。真相解明に真剣に取り組むようトランプ氏に求めたい。

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