US Gun Control: Can the Voices of the Youth Change the Government?

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米国の銃規制 若者の声が政治変えるか

 幾度となく悲劇が起きても米国の銃規制は進んでこなかった。そんな政治の無策に対し、高校生らの抗議活動が全米に広がりつつあるという。

 きっかけは今月中旬、フロリダ州の高校で起きた銃乱射事件だった。問題行動で退学処分となった19歳の男が校内に侵入し、ライフル銃を乱射して17人が死亡した。銃は男が1年前、合法的に購入したものだった。

 近年、高校で起きた乱射事件としては最悪の犠牲者数となった。米国では学校内の発砲事件が相次いでおり、今年に入って18件目というから、その頻度に驚かされる。

 事件の再発防止に向け、トランプ大統領は「解決方法を見つける」と述べ、銃購入者の経歴調査の徹底や学校の安全対策に取り組む考えを示してはいる。だが、トランプ氏は抜本的な銃規制には消極的とみられている。銃規制に反対する全米ライフル協会(NRA)の支持を受けているからだ。

 トランプ氏が提案した学校の安全対策には耳を疑った。教師に銃で武装するよう求め、武装する教師にボーナスを支給するという。NRAの主張に沿ったもののようだ。

 「銃には銃を」という発想でもっと銃を増やせというわけか。人口約3億2400万人の米国にある銃は約2億7千万丁ともいわれる。銃犯罪は他の国に比べて突出して多く、年間3万人が銃で命を奪われている。悲劇を招いている最大の原因は、銃が容易に入手できることだろう。

 これまで米国で銃規制の議論が進んでこなかったのは、銃所有にこだわる国民の意識があるとされる。合衆国憲法修正第2条で国民の武装の権利が認められており、保守派やNRAはこれを根拠に銃規制に強く反対してきた。昨年10月には死者58人と米史上最悪の銃乱射がラスベガスで起き、トランプ氏は銃の殺傷能力を高める特殊装置の規制を検討する考えを示したが、その対策さえ進んでいない。

 今回、光明に見えるのが高校生らが銃規制を求めて行動を始めたことだ。ソーシャルメディアで呼び掛け、規制強化を求める集会が各地で行われている。事件のあったフロリダ州では州議会前に数千人が参加したという。3月には全米での抗議デモが計画されている。銃規制を求める若者の声は強まりそうで、今後、国民の意識を変えていく契機になる可能性もある。今年11月の中間選挙でも銃規制は大きな争点になるだろう。

 日本人としては服部剛丈(よしひろ)さんの事件を忘れることはできない。1992年10月、米国に留学中だった高校2年の服部さんがハロウィーンパーティー会場と勘違いして入った住宅の敷地で、住人の男性に射殺された。銃がなければ起きなかった悲劇だ。

 留学生や旅行者を含め、いつ誰が銃の犠牲になるか分からない。そんな米国社会の現実を今度こそ変えてほしい。

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