The West’s Deep-Seated Distrust of Russia

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再び冷戦時代に戻ったかのような印象だ。欧米とロシアの関係が大きく冷え込み、欧米諸国などが相次ぎロシア人外交官を追放する深刻な事態になっている。

 直接のきっかけは、今月初めに英南部で起きたロシア人暗殺未遂事件だ。被害に遭ったのはロシアの元情報機関員と娘で、神経剤で襲撃されたという。元情報員は国家反逆罪で服役中にスパイ交換で釈放され、英国に移住していた。

 英政府は旧ソ連製の神経剤が襲撃に使われたとし、ロシアの犯行だと表明。制裁措置として外交官23人の国外追放などに踏み切った。英国では過去にも、ロシアの元情報機関員が放射性物質で毒殺される事件などが起きていた。

 欧米では「欧州が戦後初めて神経剤で攻撃された」として、英国に同調する動きが広がった。結果的に欧州各国や米国、北大西洋条約機構(NATO)などが相次ぎロシア外交官の追放に動き、その総数は150人を超えた。

 欧米はこれまでも、強権的なプーチン大統領が率いるロシアへの不信を募らせていた。ウクライナ領クリミア半島の併合に加え、米大統領選を含めた各国の選挙への介入、サイバー攻撃や偽情報の流布などを仕掛けて欧米を揺さぶってきたとみられるからだ。

 こうした工作活動の一端を、外交官と称して大使館に勤める情報機関員が担ってきたとされる。欧米が協調してロシア外交官追放に踏み切ったのは、募りに募った対ロ不信が背景にあるともいえる。

 ロシアは襲撃事件への関与を否定するが、欧米がこぞって対ロ制裁に動いた現実を真摯に受け止めなければならない。欧米との対立をあおり、国際秩序を乱すロシアへの警告である。ロシアはこれ以上の関係悪化を避けるべく、信頼回復の道を模索すべきだ。

 日本政府は「事実関係の解明」が先決として欧米に同調していない。安倍晋三首相は5月末に訪ロする予定だが、首脳会談でこの事件の真相究明を求めるといった対応が最低限、必要になろう。

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