Don’t Accept Recognition of Golan

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イスラエルが1967年の第3次中東戦争でシリアから奪ったゴラン高原について、トランプ米大統領が主権はイスラエルにあると認める文書に署名した。

イスラエルによるゴラン高原の占領と、その後の併合を国際社会は認めていない。これに背を向ける米国の一方的な政策変更は占領を固定化する危険な判断である。 力による国境線の変更を許してはならない。シリアはもちろん、周辺のアラブ諸国や欧州は反発している。菅義偉官房長官が「併合を認めない日本の立場に変更はない」と述べたのは当然だ。

国連安全保障理事会はイスラエルに対し、占領地からの撤退を求める決議を採択している。米国を含む、国際社会はこれを和平実現の原則としてきたはずだ。

ゴラン高原はイスラエルとシリアの国境地帯に広がる。長年の対立を終わらせるには、ゴラン高原をシリアに返還し、両国が平和条約を締結する「土地と平和の交換」しかない。この原則を崩すべきではない。

気になるのはトランプ大統領がこのタイミングで主権承認を認めた理由だ。4月にはイスラエルで総選挙が予定されている。汚職疑惑の渦中にあるネタニヤフ首相は苦戦が伝えられている。

トランプ政権にとって、ネタニヤフ氏は中東政策の重要なパートナーだ。外交上の得点を与えて再選を後押しすると同時に、米国内のイスラエル支持層に訴えかける自身の再選戦略があるとすれば、軽率な判断と言わざるをえない。

中東をめぐる、トランプ政権による内向き優先の政策変更は、エルサレムの首都認定、イラン核合意からの離脱に続き、今回が3度目だ。いずれもネタニヤフ政権が強く求めてきた内容だ。

中東の安定実現には大国である米国の役割が不可欠だ。しかし、過度なイスラエル寄りの姿勢は中東各国の不信を広げる。米国と敵対するイランや過激派勢力の活動を刺激し、地域を一段と不安定に陥れることになりかねない。

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