In the Suburbs of Washington, in the Eastern US …

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米東部ワシントン郊外に人口2万人弱の小都市タコマパークはある。米ソ核戦争の恐怖に震えた1980年代に「非核都市」を先駆けて宣言し全米に知れ渡った。耳目を引いたのは「非核」が名ばかりではなかったことだ▲日本と同じ「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」の非核原則にとどまらず、核兵器関連企業との契約を条例で禁じる徹底ぶりだ。3年前に国連が採択した核兵器禁止条約を初めて支持した地方議会となったのも、その面目躍如であろう▲「核なき世界」の理念につらなるこの条約は、核兵器の開発や製造から使用や威嚇までを包括的に禁じ、廃絶に至らせると規定する。米国など核保有国はこぞって反対し、日本もそれに追随して発効のめどはたっていない▲どうやって推進するか。その議論をするはずだったこの春の国連での核拡散防止条約(NPT)再検討会議が、新型コロナウイルスの影響で延期される見通しという。規模を縮小してお茶を濁すくらいなら、時期をずらしてもしっかり議論すべきだろう▲北朝鮮やイランの核開発はもちろん問題だ。同時に軍縮の義務を負いながら新型核兵器の開発に血道をあげる米露の振る舞いも看過できない。ともに翻意させるよう世界は結束して迫る必要がある▲かつて非核の世論を動かしたタコマパークはいま化石燃料をゼロにする全米初の条例案を審議中だ。こんどは環境革命をけん引するのだという。小さくてもキラリと光るリーダーシップに見習うところは大きい。

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