【イラン核疑惑】米の党派対立をあおるな
イランの核兵器開発疑惑をめぐる欧米など6カ国との交渉が、今月末の枠組み合意に向け大詰めを迎えている。6月末の最終合意を目指す米オバマ政権は精力的に交渉を続けているが、対イラン強硬派の議会・共和党との対立で難航している。
今月上旬にはイスラエルのネタニヤフ首相が米政府の頭越しに議会で演説し、対立の火に油を注いだ。ここは全ての当事者が冷静さを取り戻し、外交解決へ交渉を加速すべきだ。
イランの核問題は2002年、18年にわたる核開発計画を在米の反体制派が暴露した。国際原子力機関(IAEA)は11年、核開発疑惑を指摘。米国、英国、フランス、ロシア、中国、ドイツの6カ国が協議している。
13年11月には、共同行動計画に合意し、翌年1月、イランは濃縮度5%超のウラン製造を凍結、欧米はイラン制裁の一部を解除した。しかしその後の交渉は難航し、期限を2度にわたり延長している。
そこへ大きな波紋を投げかけたのが、イランと激しく対立しているイスラエル、ネタニヤフ首相の訪米だ。米共和党の下院議長がオバマ政権と事前に調整しないまま演説を要請し、首相が応じた。
演説でネタニヤフ氏は、イランが「核兵器を保有するのを保証するようなものだ」と交渉の意義を根底から否定した。オバマ政権は「外交は大統領の専権事項だ」と不快感を隠さない。
米議会はこれまで、超党派でイスラエルを支援してきた。ネタニヤフ氏の演説は民主党議員の反発を招き、上下両院で60人が欠席するという異例の事態になった。
米議会の党派対立をあおったネタニヤフ氏の言動は、イスラエルの孤立を招きこそすれ、いいことは何一つあるまい。今月17日のイスラエル総選挙を前にしたパフォーマンスとすれば、軽率にすぎよう。
交渉の当事者はあくまで6カ国の政府とイラン、IAEAだ。最終合意に向け、交渉の立て直しが急務となる。イランの核開発を制限する期間や、欧米が対イラン制裁を解除する手順、イランに認めるウラン濃縮の規模など詰めなければならない課題は多い。
ことしは核拡散防止条約(NPT)発効から45年に当たる。4月にニューヨークで開かれるNPT再検討会議の成功に向けても、いまが正念場だ。
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