TPP交渉打開へ日米は最後の決断を
日米両国は環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐる閣僚協議を終えた。一定の前進はあったものの、焦点のコメや自動車分野の合意には至らなかった。日米双方は合意を急ぎ、参加12カ国による全体交渉に弾みをつけるべきだ。
甘利明経済財政・再生相とフロマン米通商代表部(USTR)代表の協議は19日夜に始まり、21日午前3時を回るまで続くマラソン交渉となった。
28日の日米首脳会談を控え、双方が間合いを縮める真剣な努力をした跡がうかがえる。この点は一応の評価ができる。
懸案のひとつである米国産コメの輸入拡大をめぐり、米国は主食米だけで年17万5千トンの受け入れを要求した。
もうひとつの自動車部品では、攻守入れ替わるかたちで日本が米国に関税の即時撤廃を求めた。いずれも双方の国内に慎重論があるが、日米両国政府は粘り強く交渉を重ね、できるだけ早く妥協点を見いだす必要がある。
TPP参加12カ国を合計した国内総生産(GDP)の規模は、世界全体の約4割を占める。このうち約8割の経済規模を持つ日米両国の交渉の行方は、他の交渉参加国も注視してきた。
日米間の大筋合意がなければ、12カ国全体の合意はさらに遠のく。来年の米大統領選を控え、決着時期が遅れるほど交渉全体が漂流する危険が高まる。日米両国政府はTPP交渉を主導する責務があると強く自覚すべきだ。
特に米国に注文をつけたい。
米議会の超党派グループは、米大統領に強力な通商交渉の権限を与える貿易促進権限(TPA)法案を提出した。大統領が外国とまとめた通商合意を、議会が事後修正なしで一括承認する権限を認める内容だ。
TPP交渉参加国はまずTPAをとるよう米国に求めてきた。知的財産権などをめぐって米国と対立する新興国から一定の妥協を引き出すためにも、TPAは不可欠だ。米政府は、上下両院の反対派議員の説得に全力をあげなければならない。
TPPの対象は関税の削減・撤廃だけでなく、サービス、競争政策、知的財産権など広範囲に及ぶ。次元の高い、次の世界標準となる貿易・投資ルールをつくることは、この地域にとっても、日本にとっても最大の成長戦略であると関係者は再認識すべきだ。
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