A Half-Year Since Inauguration: No Sign of a Destination for the Superpower

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トランプ米大統領の就任から半年が過ぎた。「米国を再び偉大にする」と宣言して出発したが、この間の米国政治を振り返れば、混迷と混乱しか思い浮かばない。

 選挙では、過激な主張で現状に不満を抱く層の支持を集めたものの、現実の壁に阻まれて多くの公約は実現せず、視界不良のまま漂流を続けているのが現状だろう。加えて昨年の大統領選にトランプ大統領の陣営とロシア政府が共謀して介入したとされる疑惑「ロシアゲート」が政権への不信を増幅させている。

 米紙ワシントン・ポストとABCテレビの世論調査では、大統領の支持率は36%まで下落し、不支持率は58%だった。就任後半年の支持率としては、戦後歴代大統領の中で最低という。政権の迷走ぶりをみれば当然とも言えるが、再浮上の材料は乏しく、既にレームダック化しているとの見方さえ出ている。

 実際、最重要政策に掲げた医療保険制度改革「オバマケア」の見直しは、与党共和党内の造反で迷走。メキシコ国境の壁建設や大規模減税、インフラへの巨額投資もめどがたたないままだ。

 実現したものといえば、地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」からの脱退表明や、環太平洋連携協定(TPP)の離脱ぐらいだが、自国第一主義を掲げて国際協調体制に背を向けたことで、世界では「米国抜き」の秩序を模索する動きが始まっている。こうした孤立化は真に米国の利益にかなうことなのか、トランプ政権はよく考えるべきだろう。

 外交・安全保障政策も、行き当たりばったりの感が否めない。

 選挙公約で海外への軍事的関与を減らすと言ったのに、思いつきのようにシリアへミサイル攻撃を仕掛ける。北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長との会談に前向きな姿勢を示したかと思えば、軍事行動を示唆する。中国に対しても持ち上げたり、批判したりと見方が定まらない。これでは混乱するばかりだ。

 このトランプ政権とどう向き合うか。これまで経済から安全保障まで米国との緊密な関係を築いてきた日本は、距離の取り方を厳しく問われる。

 長年にわたってグローバル化や自由化を主導してきた米国は、保護主義重視の内向き社会へと変質し、日本にも貿易赤字の是正など厳しい要求を突きつけてくるのは確実だ。アジアや欧州の国々と連携を強めながら、冷静に対処していくしかあるまい。

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