米国のトランプ政権の強硬な通商政策の波紋が世界に広がっている。米国が3月下旬に中国製の鉄鋼、アルミ製品にかけた追加関税への対抗措置として、中国政府は、米国産の豚肉、ワインなど合計128品目に最大25%の関税上乗せを発動した。
米国は追加関税とは別に、中国の知的財産権侵害への制裁措置の対象も近く公表する見通しだ。中国がさらに対抗措置をとる可能性はあるが、同時に米中両国は輸出自主規制など水面下で交渉を始めているという。
中国と対照的なのは韓国だ。韓国は、欧州連合(EU)やメキシコ、カナダなどとともに、鉄、アルミの追加関税の対象国から外れた。その主因は米韓自由貿易協定(FTA)の見直し交渉を進めていたからだとされる。
この交渉で韓国は、米国安全基準による輸入車受け入れ枠の拡大や、通貨安誘導の禁止などで譲歩し、大筋合意したと伝えられた。ただ、その後、トランプ大統領は北朝鮮問題に絡めて米韓FTA合意を「保留するかもしれない」と発言、韓国はトランプ外交に翻弄されている。
トランプ政権が過去の米政権と比べても異例なのは、通商政策に原則がなく、2国間の「取引」外交に終始していることだ。
まずは制裁関税などで脅しをかけ、2国間交渉のテーブルに相手国を引き出し、管理貿易的な措置もいとわずに、国内選挙向けに「成果」といえる譲歩を勝ち取ろうというまさに原則なき取引だ。
米国が主張するような貿易上の問題があるならば、世界貿易機関(WTO)という多国間の枠組みを使って紛争を処理すべきである。今のトランプ流の外交は、世界の通商ルールをねじ曲げ、無益な貿易戦争を招く恐れがある。それは金融市場や企業心理にも悪影響を及ぼし、最終的には米国の利益にもならないはずだ。
日本は米国と緊密な同盟国であるにもかかわらず、安全保障を理由とした鉄・アルミ製品の追加関税の対象国になった。日本は多国間の通商ルールを尊重し、米国の問題ある行為についてはWTOに提訴して解決を目指すべきだ。
今月の日米首脳会談で、トランプ大統領は、2国間交渉による問題解決を持ちかけてくるかもしれない。安倍晋三首相は、多国間協調に基づく自由貿易の重要性を粘り強く訴えるべきだ。
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