The Japanese-American Trade Agreement and Car Tariffs: A Forced Reconciliation

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日米貿易協定の国会審議が始まった。米議会の承認は不要なため、日本の国会で承認されると年明けにも発効する。今国会の焦点の一つだ。

 大きな論点となっているのは、国際ルールとの整合性である。協定の正当性を左右する問題だ。

 世界貿易機関(WTO)のルールは、2国間で貿易協定を結ぶ場合、9割程度の関税撤廃が必要と解釈されている。日本政府は、協定の撤廃率は米国92%、日本84%でルールに則していると説明している。

 理解に苦しむのは、日米の交渉で継続協議となった日本車と部品の関税撤廃も米国の撤廃率に含めていることだ。車と部品は対米輸出全体の3割超を占め、これを除くと米国の撤廃率は6割程度に過ぎない。

 協定は「撤廃についてさらなる交渉」を行うと記載している。これをもって安倍晋三首相は撤廃率に含めて問題ないとの考えを示している。

 だが次の交渉のめどは立っていない。交渉したとしても、日本車への追加関税を振りかざしてきたトランプ政権が撤廃に応じるとは考えにくい。協定の記載についても「撤廃の確約とは読めない」と通商問題に詳しい専門家から指摘されている。

 さらに疑問なのは、日本政府が車関税撤廃を、協定の経済効果を示す試算にまで組み込んでいることだ。国内総生産(GDP)を約4兆円増やすというが、効果を大きく見せるためではとの疑念は拭えない。

 こうした問題が生じたのは、首相が協定を「日米双方にウィンウィン」と主張したからではないか。

 実際は、米国が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)で約束した日本車の関税撤廃を見送ったのに、日本は米国産牛肉や豚肉の関税をTPP並みに下げると決めた。日本の譲歩が目立つ内容である。

 日本政府が車関税撤廃を既成事実のようにみなすのは、首相発言と無理につじつまを合わせるものとみられても仕方がない。

 日本の経済発展を支えてきたのは自由貿易だ。その土台となる国際ルールの順守は最優先課題である。

 首相は所信表明演説で「自由貿易の旗手として、ルールに基づく経済圏を世界に広げる」と強調した。協定がルールに反しないという明確な根拠を示すべきだ。

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