Obama Administration Will Face Serious Challenge of International Stability

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急変する世界 国際秩序安定をどう図るか、米新政権が背負う重い課題(1月4日付・読売社説)

 世界全体の景気が急速に冷え込む中、「チェンジ(変化、変革)」を掲げるバラク・オバマ氏が20日、米国新大統領に就任する。

 最優先の課題は米国経済の再生だ。イラクとアフガニスタンの二つの戦争、核拡散防止、中東和平問題などの難題も待ち構えている。

 オバマ次期政権が、米国主導の世界秩序の立て直しに向け、いかなる取り組みを見せるのか。その政策が、2009年の世界の行方を左右することになる。

 8年間続いたブッシュ政権のもと、イラクの混迷や金融危機で、米国の威信は大きく傷ついた。「ベルリンの壁」とソ連が崩壊したあと、到来したかに見えていた米国の一極支配体制は、足元から揺らいでいる。

 大国復活を目指すロシア、経済力と軍事力の増大を背景に存在感を強める中国、地域の大国として大きな潜在力を持ったインド、ブラジルなど、新たなプレーヤーが台頭している。

 金融危機への対応では、G8(主要8か国)に中国やインド、南アフリカ、韓国などを加えたG20が、また地球温暖化対策では、主要排出国16か国会合が、新たな枠組みとして定着してきた。

 しかし、各国とも昨年来の金融危機と景気後退で、苦境の中にある。このため、先進国と新興国との利害対立も深まっており、懸案の合意形成を難しくしている。

 オバマ次期大統領は、米国のリーダーシップを再生するため、世界に比類のない軍事力、経済力、外交力など米国が有するパワーを総動員し、重大かつ喫緊の課題に取り組む、と宣言している。

 実際、世界をとりまとめ、安定と繁栄へ導いていく能力を有する責任ある大国は、米国以外にはあるまい。

 オバマ氏には、その言葉の通り、諸政策を具体化し、果敢に遂行していく責務があろう。

 現在、世界情勢は急激に変化し、流動化している。

 ◆中国もロシアも難局◆

 軍事的な膨張を続ける中国は、昨年末、ソマリア沖の海賊対策で軍艦を派遣し、国際責任を果たす意思を鮮明にした。外洋展開能力を誇示する狙いもあろう。

 だが、国内では、社会不安が増大しつつある。建国60年の今年は、チベット動乱から50年、民主化運動を弾圧した天安門事件から20年の節目でもある。

 北京五輪成功直後の米国発金融危機に伴う景気減速で、生活への不満は高まっている。格差是正を要求する大衆行動が広がる恐れが指摘されている。

 ロシアも、好調だった経済が、原油価格の暴落で暗転した。外貨準備の取り崩しを余儀なくされるなど、資源偏重の経済構造の脆弱(ぜいじゃく)性を露呈した。

 一方で、欧米の東方拡大路線に対する強烈な対抗意識は変わるところがない。

 中露には、国連安全保障理事会の常任理事国の立場から、オバマ次期米政権と協力体制を築き、世界の安定のために、責任を持って行動してもらう必要がある。

 ◆テロとの戦いは続く◆

 「テロとの戦い」も、引き続き国際社会の重大な課題だ。

 オバマ次期大統領は、テロとの戦いの最前線は、イラクではなく、アフガニスタンだとして、イラクから米軍を撤退させ、アフガンへの増派を進める方針だ。

 米軍を早期に撤退させつつ、イラクの安定を確保できるのかどうか。宗派対立の激化で内戦に陥らないようにするには、復興支援を強化していくことが重要だ。

 アフガンでは、米国から増派要請を受けている英独仏など北大西洋条約機構(NATO)メンバー国は、これにどこまで積極的に応じるのか。パキスタン領内にあるテロ集団の拠点を、パキスタン政府の協力で壊滅できるか、という難題もある。

 核兵器保有国であるパキスタンとインドの根深い対立が、昨年、両国で相次いだ無差別テロを契機に、再燃しようとしているのも懸念材料だ。

 北朝鮮の核廃棄や、イランの核開発の阻止も、焦眉(しょうび)の急だ。

 オバマ氏は、核廃絶を目標に掲げ、専制的な独裁政権とも「無条件で対話する」外交戦略に力点を置いている。だが、経済力や軍事力のテコなしに、核交渉で成果をあげられるか、疑問も残る。

 健康不安が伝えられる金正日総書記の後継問題など、北朝鮮情勢の不透明感が強まっている。

 核廃棄や拉致問題の解決を早急に図らなければならない日本は、米国と緊密に連携しつつ、対北朝鮮交渉ではより能動的な対応が求められる。

(2009年1月4日01時34分 読売新聞)

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