Japan-U.S. Relations

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オバマ米政権の日本重視の姿勢は、ほんもののようだ。クリントン国務長官の最初の訪問国に日本が選ばれたのに続いて、オバマ大統領が、ホワイトハウスを訪れる最初の外国首脳として麻生首相を招待した。

 クリントン長官と中曽根外相の会談で訪米が決まった。日本を「アジア外交の礎石」と位置づけるオバマ政権からのメッセージといえる。

 今の米政権の関心からすると、世界同時不況の克服に日本の力を借りるのが喫緊の課題だろう。加えてイラク、アフガニスタンの治安安定から、北朝鮮の核・ミサイル問題、中国の軍拡、地球温暖化問題まで、日米が緊密に協力すべき課題は山積している。

 いちはやく会談が設定されたことを評価したい。首相はこの機会を活用して、日本が国際社会で果たすべき役割や米新政権との関係について、しっかり議論してほしい。

 ただし、勘違いしてはいけないことがある。米国が日本を重視するということは、我々が「重視」という日本語から想像するような、日本に甘く、大切にしてくれるということではない。

 米国の利益や戦略のために、日本を活用していくというドライな側面もあるのだ。問われるのは、日本側が何を伝えるかである。会談を開くこと自体が目的であってはなるまい。

 米国の立場から考えてみよう。オバマ政権は米国と世界の再生に取り組もうとしている。その時に大事なパートナーである日本の政権が支持率10%台を低迷し、秋までには総選挙がある。麻生政権との合意は本当に実行されるのか。米側が不安に思っても不思議はない。クリントン長官が民主党の小沢代表と会談したのも、政権交代の可能性をにらんでのことだろう。

 今回の来日で、沖縄駐留海兵隊のグアム移転に関する合意を、国会承認が必要な条約にして調印した。これは、日本が民主党政権になった場合でも拘束できるという効果をもつ。

 忘れてはならないのは、グアムへの海兵隊の移転は、普天間飛行場の辺野古への移設が進むことが条件としてセットになっていることだ。肝心の沖縄の基地問題について、麻生政権には真剣に取り組む意欲が感じられない。地元との対話を促進しないことには、前に進めない問題だ。

 また、オバマ政権が軍を増派するアフガニスタンについても、日本はさらにどんな貢献ができるか。本来なら、野党も巻き込んで日本の役割を検討しなければならないが、麻生政権にはすでにその力がない。

 首脳会談はよいが、伝えるべきメッセージは準備できるのか。弱い政権は外交交渉で譲歩を重ねて成果を取りつくろうことになりがちだ。結局、外交は内政の基盤があってこそである。

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