Iran’s President Should Debate with Obama

<--

社説:イラン大統領 ぜひオバマ氏と討論を

 物価は天井知らずで高騰し、失業率は13%とも20%ともいわれる。核開発をめぐる国連制裁下で国際的孤立も進んだ。それでもイラン国民は、強硬派のアフマディネジャド大統領の再選を望んだのである。

 80%を超えた高い投票率が有権者の強い関心をうかがわせる。まずはイラン国民の選択を尊重したい。と同時に、続投するアフマディネジャド大統領に要望しておきたい。

 イランはイラク、アフガニスタン情勢に影響力を持つ。イスラエルと対立する一方、核兵器やミサイル開発で北朝鮮との協力も指摘される。言うまでもなく石油資源も豊富だ。

 イランの動向は国際情勢を左右する。アフマディネジャド大統領には、まず国際協調を心がけてもらいたい。ホロコーストを否定し、イスラエルの「抹消」に言及したりするのは、国際社会のためにも、イランのためにもならない。核問題にしても強硬一辺倒の態度では困る。

 ホメイニ師によるイスラム革命から30年。イランでは米国を「大悪魔」と呼んだ同師の思想に忠実であろうとする勢力(革命原理派など)と、ホメイニ路線から徐々に脱却して欧米との関係改善を図ろうとする勢力のせめぎ合いが続いてきた。

 アフマディネジャド氏はもちろん前者、対抗馬のムサビ元首相は後者と色分けできる。女性の権利拡大も含めて、より開放的な社会を求めたムサビ氏は善戦が予想された。少なくとも、1回目の投票では過半数を得票する候補がおらず決選投票にもつれ込むかと思われた。

 しかし、ふたを開ければアフマディネジャド氏の独り勝ちだ。約3分の2の票をさらっての再選は、金権腐敗を糾弾する同氏への共感と、二つの隣国(イラク、アフガン)に米軍が駐留する危機感が国内に広がっていることをうかがわせる。ムサビ陣営が言うように不正があったかどうかは引き続き見守りたい。

 オバマ米大統領はカイロでの演説でイスラム世界との和解を求め、イランとの対話にも意欲を見せた。イランと北朝鮮を区別する意向も示した。米・イランの対話は、中東の安定や核問題の解決も含めて世界の変革に役立つはずだ。

 他方、アフマディネジャド氏は米国のブッシュ前大統領との「公開討論」を望み、米大統領選の最中には民主党オバマ、共和党マケインの両候補との「公開討論」に言及した経緯がある。

 この際、米・イランの「公開討論」を具体化してはどうか。テレビ討論という手もある。たとえ議論がすれ違いに終わろうとも、長い目で見れば信頼構築に役立つだろう。米・イランが対立の轍(わだち)から抜け出すことを期待する。

About this publication