U.S.-China Strategic Dialogue: Collaborating for Peace

Edited by Alex Brewer

Proofread by Robin Silberman

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社説:米中戦略対話 平和に役立つ協力を

 変化する力関係を印象づける会合だった。米中政府がワシントンで開いた「戦略・経済対話」は、主に米国が中国に注文を付ける従来の構図から、中国が米経済の運営を問いただし米国が理解を求める関係へと変容したことをうかがわせた。

 変化の背景にあるのは昨年来の経済・金融危機だ。中国の経済成長に伴い、米政府は中国重視の姿勢をすでに強めてはいた。だが、危機後の大規模な景気対策で米政府の債務は急膨張することになり、中国による米国債の買い支えがかつてないほど、米経済とドルの行方を左右する事態になったのである。さらに中国は、米国にとってビジネスの機会満載の巨大市場でもある。オバマ政権の厚遇ぶりは、中国の協力なしに自らの国際影響力を保持できない米国の苦境を露呈したようだった。

 ドルの安定は、中国にとっても死活的な問題だ。ドルが急落すれば、すでに世界最大の米国債保有国である中国の資産は大幅に目減りすることになる。ドルの将来に不安を抱いても、米国債の購入にブレーキをかけた途端、ドルが急落し我が身に跳ね返ってくる。米国債を人質に取られているという意味で米中は運命共同体なのである。

 オバマ政権下で初となった今会合から、経済分野に限らず、気候変動や安全保障など包括的に議論する場となった。名称も、2006年にブッシュ政権下で始まった「米中戦略経済対話」から「米中戦略・経済対話」に変更された。ほとんど同じに見えるが、「経済に関する戦略的課題を話し合う会合」から「地球規模の戦略的課題と経済問題を話し合う会合」に変わった意義は大きい。

 とはいえ、経済以外の対話は始まったばかりだ。新たな「G2体制」と注目されているが、米中の意向だけで世界を動かそうというのではあるまい。また、それが可能な時代でもない。しかも米中間には安全保障などで根強い相互不信がある。だからこその戦略対話なのである。

 米中が戦略的なパートナーとして、重要な国際案件の解決に建設的な役割を果たすよう期待したい。北朝鮮への対応は、その一つの試金石となろう。北の核の脅威を取り除くべく米中はこの対話を活用してほしい。中国は6カ国協議の議長国でもある。米露が中心となる核軍縮でも中国の協調は不可欠だ。

 日本も単なる傍観者にとどまらず、米中の戦略対話が特にアジア・太平洋地域の平和に貢献するものとなるよう、積極的に関与していく必要がある。中国、米国それぞれと信頼関係を一層深め、日米中3カ国による協調体制が築けるよう、外交努力を強めるべきである。

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