Remembering 9/11: The Need for Expanded Dialogue

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社説:米同時テロ8年 対話広げ安全な世界を

 8年前のことをまだ生々しく思い出すのは、その事件が時を超えて象徴的な意味を持つからだろう。01年9月11日。米国の繁栄を誇示するような摩天楼(世界貿易センタービル)は砂糖菓子のように崩れ落ち、世界をにらむ軍事の本丸(国防総省)からも火の手が上がった。

 超大国への露骨で卑劣な挑戦に対し、米ブッシュ政権は翌月アフガニスタン攻撃を始め、03年にはイラク戦争を開始した。今も世界はテロの脅威に覆われているとはいえ、一連の軍事行動(テロとの戦争)に意味がなかったとは言えまい。

 しかし大きな「宿題」が次の政権に託された。ブッシュ政権の強気の姿勢はイスラム世界を中心に反米感情を増幅した。米国とその同盟国を取り巻く環境は9・11前より危うくなった。自分たちを守るつもりが危険にさらすというパラドックスから抜け出すにはどうすればいいか。

 就任早々、オバマ大統領は「イスラム軽視」の表れといわれた「グアンタナモ収容所」を閉鎖する方針を表明、「水責め」のような過酷な尋問を改めて禁じる意向を示した。カイロでの演説ではイスラム世界との融和をめざす強い意欲を見せた。

 「テロとの戦争」という用語を排し、イラク駐留米軍撤退の道筋を定めたことも含めて、オバマ政権は前政権の政策を大幅に修正または転換した。息苦しい部屋の窓を開け放つようなさわやかさを世界にもたらしたことは、ともあれ評価したい。

 心配なのはアフガン情勢の泥沼化だ。そこでの軍事作戦は「米国民を守るために重要」とするオバマ大統領だが、旧支配勢力のタリバンが各地で盛り返す一方、米軍機などの誤爆で民間人が死傷する事件が目立ち、反米感情が高まっている。

 加えて大統領選の混乱である。日本は01年から総額約2000億円のアフガン支援を行い、大統領選関係の支援も約50億円にのぼる。それなのに、選挙不正や汚職の訴えが相次ぐ現状には落胆するしかない。

 カナダのように02年以降、アフガンで110人以上の兵士が死亡した国もある。米国を支える同盟国も大きな負担に耐えている。オバマ政権が「アフガン重視」というのも分かるが、そこで戦う意味と戦い方をじっくり考えた方がいい。

 重ねて指摘しておきたい。79年以降、ソ連軍と戦ったアフガンの武装勢力は、米国などから「イスラム聖戦士」と称賛された。今は米軍の「占領」と戦っているかもしれない彼らを一口にテロリストと呼べるだろうか。幅広い対話を通じて味方を増やし、戦うべき真の敵を見定めるべきだ。アフガンへの対応が世界の安全に影響するのは言うまでもない。

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