社説:オバマ歴訪 北朝鮮の核が試金石だ
日本を皮切りにアジア4カ国歴訪の旅を続けていたオバマ米大統領が最後の訪問先の韓国で、この地にふさわしい発表をした。北朝鮮政策担当のボスワース特別代表を12月8日から平壌に派遣するという。北朝鮮を説得して6カ国協議に復帰させ、核廃棄に向けた交渉を再開できるのか。重大な岐路になる。
もちろんオバマ大統領の今回歴訪は、より幅広いアジア政策の設計図に基づいている。その内容を示したのが先週の東京演説だ。ホワイトハウスのホームページには、この演説を日本、中国、韓国、インドネシアの4カ国語でも読めるよう翻訳が掲げられている。アジア・太平洋地域での影響力拡大に向けた意気込みを示すものだろう。
この狙いは日本の次に訪問したシンガポールでさっそく実現した。主目的のアジア太平洋経済協力会議(APEC)とは別に、米国と東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国による初の首脳会議が実現し、ミャンマー軍事政権との対話に乗り出した米国の政策転換が歓迎された。
オバマ大統領に親近感を示した代表格はインドネシアのユドヨノ大統領だった。少年時代に暮らしたこの国を来年、家族連れで訪ねたいと言うオバマ氏に、ユドヨノ氏は「インドネシアの友人だ」と応じた。
しかし、中国はそうはいかなかった。まず上海で大統領との対話集会に参加した学生は厳選されたメンバーと見られ、中国政府につごうのよい質問が目立った。オバマ大統領はインターネット規制に批判的な発言もしたが、この集会は全国中継されず地元テレビだけが放映した。
北京での胡錦濤国家主席との会談でもオバマ大統領は人権問題に触れたというが公開的でなく、クリントン元大統領やブッシュ前大統領の訪中時より弱腰だと米国内の保守派は批判している。米中の力関係が変化したと見ることもできよう。
オバマ大統領は中国で「米中が合意せずに解決できる世界的な課題などほとんどない」とも発言した。東京演説での「中国を封じ込めない」という宣言の動機にあたる認識だろう。確かに世界経済危機、地球温暖化、天然資源、安全保障など、どれをとっても中国はあまりに巨大なプレーヤーである。米国の新アジア政策の核心は結局、中国にある。
では中国には何が求められるか。一つは北朝鮮の核問題での貢献に違いない。6カ国協議の議長国であり食料やエネルギーなど北朝鮮の命綱を握る国として、強い影響力を発揮する責任が中国にはある。ボスワース氏の訪朝を側面支援する形で、北朝鮮に6カ国協議復帰を強く促すべきである。
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