社説1 雇用創出の課題に直面するオバマ政権(12/11)
オバマ米政権が雇用をどう作り出すかの課題に直面している。8日には中小企業減税、社会基盤投資、省エネ型住宅投資への減税を3本柱とする方針を明らかにした。財政が厳しいなか、いかに効率的にお金を使い成長と雇用創出につなげるかは、日本にも共通の課題である。
米国の失業率は11月には小幅低下したものの、依然として10%にのぼる。カリフォルニアやフロリダなどでは1976年に現行の統計をとり始めて以来の高水準だ。景気こそ上向いているとはいえ、雇用情勢はなお予断を許さない。
大統領は8日の経済演説で「景気後退が始まった時と比べ、就業者は700万人少ない」と指摘。今年2月に決めた総額7870億ドル(約69兆円)の経済対策に続く、第2弾の対策を打ち出す考えを示した。
まず、米国の新規雇用の65%を創出してきた中小企業に的を絞り、減税を実施する。中小企業向けの新規投資に対するキャピタルゲイン(株式譲渡益)課税を1年間やめ、設備投資の減価償却を早められるようにする。貸し渋り対策として、融資への政府保証を増やす。
次に、道路や橋などの社会基盤投資が途切れないようにする。そして、省エネの設備を整えた住宅投資には、税金を還付する。公共投資や住宅投資で仕事を作るのが狙いだ。
問題は財源をどうひねり出すか。大規模な財政支出で米国の財政赤字は、足元では国内総生産(GDP)の10%まで膨らんでいる。一層の赤字拡大には議会や世論の警戒感も強いため、大統領は8日の時点では追加対策の規模を明示しなかった。
昨年秋に成立した金融安定化法では、銀行への公的資金注入のために7000億ドルの資金枠がある。銀行からの公的資金の返済で、今年夏に想定していたより2000億ドル多くの余裕が生じたため、政権は追加景気対策への転用を考えている。
財政が厳しいなか、景気と雇用の悪化をどう防ぐかは、まさに日本が直面する難問でもある。
失業率こそ5%台と米国より低いとはいえ、これは雇用調整助成金という企業に対するつっかい棒のおかげでもある。設備投資の不振で7~9月期の実質成長率が前期比年率1%台に下方修正され、来年にかけ景気の二番底の懸念は尽きない。
米国が住宅版の「エコ減税」を打ち出すなど、日本と共通の対策もあるが、企業による雇用創出の観点を真っ先に置いているのは評価に値する。日本も理にかなう政策は積極的に採り入れるべきではなかろうか。
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