America and China Have Avoided Open Confrontation, But for How Long?

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中国の強い反発の中、オバマ米大統領がチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世と会談した。

 会談中止を求めて中国は報復措置もちらつかせてけん制していた。米国の台湾への武器売却決定や、米インターネット検索大手グーグルの検閲問題などで、米中関係はぎくしゃくしている。

 オバマ氏は微妙なタイミングにもかかわらず、チベット特有の宗教、文化、言語の保護や人権擁護に強い支持を表明した。あえて中国の警告に目をつぶったということだ。

 ダライ・ラマは昨年10月にも訪米したが、オバマ氏は会談を見送った。初訪中を前に「中国に遠慮した」と、米国内から強い批判を浴びた。人権重視を掲げる大統領にとっては、大きな失点だったといえる。

 雇用対策や医療保険改革が難航し、支持率は下落の一途をたどっている。11月の中間選挙で与党民主党の苦戦は必至とみられる。内政面で苦境が続くオバマ氏である。

 弱腰批判をかわし、人権重視の姿勢を再度アピールすることで、国内世論を味方に付ける。その意味でも会談は避けて通れないものだった。

 ただ、会談後は「建設的で協力的な米中関係の重要性の認識で一致した」との声明を発表した。あらためてチベットは中国の一部とも言っている。明らかに中国に配慮したものだ。

 中国はダライ・ラマを「祖国を分裂させる組織を率いる分裂主義者」とする立場を変えていない。当然のように「強い不満と断固たる反対を表明する」とオバマ氏を非難し、「内政干渉の停止」を強く求めた。

 だが、「実際の行動で中米関係の安定した発展を守るよう求める」としただけで、報復措置については具体的に触れなかった。

 中国も決定的な対立は望んでいないということだ。米国は最大の貿易相手国である。全面対決は景気を一気に冷え込ませることにもなりかねない。互いに譲れない建前と本音を巧みに使い分けているということだろう。

 今やG2と称される米中である。北朝鮮やイランの核問題など重要課題の解決には、両国の協力が欠かせない。米中の良好なパートナーシップなしには、経済的にも世界の安定が保てない現実がある。

 その中国が人権問題をめぐって常に世界の批判にさらされている。これでは、いつまでたっても世界の信頼は得られまい。批判の声にもっと耳を傾ける必要がある。

 ダライ・ラマが求めるのは独立ではなく「高度な自治」である。中国は「報復」などという鎧(よろい)を捨て、大国としての自覚と責任を持つべきだ。

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