The Obama Administration’s Resolution of Settlements and the “Barrier”

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社説:オバマ政権 入植地と「壁」の解決を

 米・イスラエル関係が冷え込んでいる。イスラエルのネタニヤフ首相が、同国への「無条件の支持」をうたう米国にやってきた。なのにホワイトハウスは、オバマ大統領との握手の場面を記者団に撮影させなかった。尋常ならざる事態である。

 その主たる責任はイスラエル側にあるだろう。同国は67年の第3次中東戦争以降、占領したヨルダン川西岸や東エルサレムなどにユダヤ人入植地を造り続けた。入植地といえば小さな集落を連想しがちだが、人口数万人の大規模団地もある。

 これについて日本は「基本的にジュネーブ条約違反」(外務省高官)との立場だ。戦争捕虜や占領地の扱いなどを定めた同条約は、占領地への自国民移住などを禁じている。歴代米政権も入植地を「和平の障害」と憂慮してきた。

 しかし、イスラエルは今月上旬、バイデン米副大統領の滞在中に東エルサレムでの新規住宅建設を発表した。これを米側が批判すると、ネタニヤフ首相は米国の親イスラエル団体の会合で「エルサレムは我々の首都だ」と対決姿勢をあらわにした。

 同首相は米国のネオコン(新保守主義派)や共和党の支持が厚い半面、オバマ、クリントンの両民主党政権との摩擦が目立つ。だが、こうした首相の強硬姿勢がイスラエルとパレスチナを平和に導けるのか。改めて首をかしげざるを得ない。

 国際合意を無視した和平などありえないからだ。エルサレムは公認されたイスラエルの首都ではない。イスラエルが建設する「分離壁」にしても、国際司法裁判所は「国際法違反」と断じ、国連総会は壁の撤去を求める決議を採択した。だが、入植地問題と同様、壁の解消を図る動きは米国内でもほとんど見えない。

 01年の米同時多発テロ後、ブッシュ政権はテロと戦う姿勢を鮮明にしたが、「何がテロを助長するのか」という問題意識は希薄だった。テロの黒幕、ウサマ・ビンラディン容疑者は、イスラエルのレバノン侵攻(82年)への怒りから対米テロを思いついたと語っている。

 証言の真偽はともあれ、テロを防ぐには不合理の解消も必要だ。多数の犠牲者を生むイスラエルの軍事行動を擁護し、同国に不利な国連安保理決議案は何度でも拒否権で葬る。それが近年の米国の常だが、あからさまな不合理や不条理を放置すればテロ根絶は難しかろう。

 中間選挙を控える米議会には、ユダヤ票への思惑もあってイスラエル支持の声が強い。だが、米国が公正を保つ姿勢を見失えばテロの土壌が肥え太り、過激派が勢いづく。その矛先は同盟国のイスラエルにも日本にも及ぶことを忘れてはなるまい。

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