首相沖縄初訪問 今さら『県内移設』とは
鳩山由紀夫首相が沖縄県を初めて訪問し、米軍普天間飛行場の県内移設の意向を明言した。公約破りは明白だ。「国外・県外移設」を託した沖縄県民をはじめ国民を裏切るもので到底看過できない。
首相は仲井真弘多沖縄県知事に「県外は現実的には難しい。沖縄に負担をお願いしなければならないという思いで来た」と語った。
首相は衆院選で「県外が望ましい」と公約。党首討論では「腹案がある」と断言し、「命懸けで行動する。必ず成果を挙げる」と大見えを切った。
そんな首相から、今さら県外移設の難しさを聞かされるとは、知事も思っていなかっただろう。
首相はその理由を「日米同盟や抑止力の観点から難しい」と説明したが、米側が抑止力維持を理由に県内移設に固執するのは最初から分かっていたはずだ。なぜ今さら言い出すのであろうか。
首相は記者団に「学べば学ぶにつけ、沖縄に存在する米軍がすべて連携し、抑止力が維持できるという思いに至った」と語った。
公約は浅慮からだというのか。結果的に国外・県外移設は選挙目当ての甘言だった。国民を欺いた首相の政治責任は極めて重い。
在日米軍基地の約75%が集中する沖縄県民の基地負担軽減や、普天間飛行場の国外・県外移設の検討、緊密で対等な日米同盟関係の追求など、鳩山内閣が目指そうとした方向性は評価していい。
問題は、その実現に向けた意欲と政治手腕が欠けていたことだ。
首相が、国外・県外移設に死力を尽くした形跡は見当たらない。
第一、首相はオバマ米大統領との会談で、国外・県外移設を提起したことがあるのだろうか。
米海兵隊の抑止力とは何か、なぜ沖縄に基地がなければならないのか。そんな基本的議論すら、政府内から何一つ聞こえてこない。
仮に国外移設が難しいとしても沖縄以外の都道府県への移設をどこまで本格的に検討したのか。
部隊の一部移設先に挙がった鹿児島県・徳之島では大規模な反対集会が開かれた。沖縄同様、戦後の米軍統治を経て、基地への抵抗感が強い徳之島を候補にすること自体、安易に過ぎる。
沖縄では基地負担の押し付けを本土による「差別」とする意見が公然化している。真摯(しんし)な努力を欠く首相に、県内移設受け入れを求められても、沖縄県民は納得できないだろう。
首相は、思慮の浅さと政治手腕の拙劣さを猛省すべきである。
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