The Gaza Blockade Must Be Lifted

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社説:支援船急襲 ガザ封鎖解除が急務だ

 にわかには信じがたい事件である。イスラエルによる境界封鎖に苦しむパレスチナ自治区ガザへ、人道団体の船団が支援物資を運んできた。するとイスラエル軍兵士がヘリコプターなどで支援船を急襲し、小競り合いの末の発砲で少なくとも9人が死亡した。流血の経緯は明らかではないが、死者は8人がトルコ人、1人は米国人との報道もある。

 国連安保理は事件翌日(1日)、イスラエル軍の武力行使に「深い遺憾」の意を表明する議長声明を全会一致で採択した。速やかな採択は是としたい。明確な非難に至らなかったのは、イスラエルへの「無条件の支持」を旨とする米国が反対したためだが、友好国をかばって済ませる問題ではない。

 徹底的な真相究明が必要だ。ジュネーブの国連人権理事会はイスラエルの行動を強く非難し、国際的な独立調査団の派遣を求める決議を賛成多数で採択した。米国は反対、日本は棄権した。米国はイスラエルの調査を重視しているが、国際的な構成の方が中立性は高まる。その調査にイスラエルも全面協力すべきだ。

 無論、イスラエルの「正当防衛」の主張にも耳を傾けなければならない。だが、それを信じる国がほとんど見当たらないのは、昔からイスラエルの「過剰な武力使用」が指摘されてきたからだろう。08年以降のガザ攻撃では1300人を超えるパレスチナ人が死亡した。レバノンでは、イスラエル側が「誤爆」と主張する攻撃で、国連関係者や多くの民間人が犠牲になってきた。

 ユダヤ人入植地の建設や国際司法裁判所が違法と断じた「分離壁」も含めてイスラエルの問題行動は多い。しかし、これまでは安保理にイスラエル非難決議案が提出されると、米国が拒否権で葬り去るのが常だった。そんな米・イスラエル関係への怒りが急進イスラム勢力の台頭を促し、テロの土壌を肥やしてきた可能性は否定できまい。

 米オバマ政権には、より公平な対応を求めたい。支援団体「フリー・ガザ・ムーブメント」の船団には約700人が乗り込み、ノーベル平和賞受賞者も支援していた。イスラエルはガザを実効支配するハマスなどの「テロ組織」と同団体が関係しているとみなし、08年以降、支援船を拿捕(だほ)したこともあったという。

 支援団体の行動が合法的かどうか見定める必要もあるが、イスラエルは05年のガザ撤退後も境界を管理し、実質的封鎖を続けている。150万人ものガザ住民が食料や燃料、医薬品にも事欠く非人間的な状況は容認できない。イスラエルはガザの封鎖を直ちに解くべきだ。米国は責任を持って同国を説得してほしい。

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