I Understand the American Financial Regulations but…

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2010/7/17付

 難航していた米国の金融規制改革法案が成立することになった。銀行がリスクの高い取引に手を出すのを抑制し、金融危機の再発を防ぐことを狙った。危機防止は世界共通の課題だが、金融規制は国ごとの市場や取引のあり方を踏まえる必要があることは再確認しておくべきだ。

 ざっと2千ページにのぼる今回の法案は、細目を詰めるために500余りの規則を作る必要があるが、目標はとてもはっきりしている。リーマン・ショックのような金融危機を2度と起こさないようにすることだ。

 預金を預かり決済という金融のインフラを担う銀行が、リスクの高い取引による損失で経営を揺さぶられるような事態を防ぐ。ボルカー元連邦準備理事会(FRB)議長の主張した「ボルカー・ルール」が、法案の基本的な哲学となっている。

 世界恐慌後の1933年に成立したグラス・スティーガル法は、銀行と証券の分離という米国の金融制度の大枠を定めた。80年代以降の急速な金融の進化を受け、その仕組みは99年に撤廃された。ところが、銀行と証券の業務が複雑に融合するのに既存の金融規制や監督が追いつけず、今回の金融危機が発生した。

 今回の金融規制法案はグラス・スティーガル法を単純に復活させるものではないが、金融機関の活動にタガをはめる。金融界の反発は大きく調整には時間を要した。例えば銀行によるヘッジファンドなどへの投資も全面禁止するのではなく、銀行の中核的自己資本の3%までという制限付きで認められた。

 大手金融機関の経営が悪化した場合、「大きすぎてつぶせない」事態となり結局は公的資金で救済してきた。法案では円滑に破綻処理できる仕組みを作った。規制当局を束ねる金融安定監視評議会も創設し、FRBの監督権限を広げ強めた。

 大規模な金融危機が多くの米国民の生活を台無しにした。公的資金を使い救った大手金融機関は今や高収益をおう歌する。今回の法案は米国の金融システムを立て直そうとしたものではあるが、同時に国内のそんな空気も色濃く反映されている。

 国際的に金融規制見直しの動きが広まるなか、今回の法案は大きな一石を投じようとしている。ただ米国では直接に市場を通じた金融が中心なのに対し、日本は銀行による貸し出しが主体であるなど、日米では金融の仕組みが大きく異なる。

 米国と同じ規制を機械的に取り入れるのではなく、金融危機の再発を防ごうとする今回の法案を貫く精神こそを参考にすべきだろう。

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