Remembering the Atomic Bombs and Moving Forward

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原爆忌 核軍縮の潮流を確かなものに(8月6日付・読売社説)

 広島はきょう6日、長崎は9日に65回目の原爆忌を迎える。被爆の惨禍が二度と繰り返されぬよう、平和への誓いを新たにする日だ。

 広島の平和記念式典には、ルース駐日米大使が、米国代表として初めて参列する。米国と同じく欠席を続けてきた英仏も、今年初めて出席する。

 国連事務総長の参列も今回が初めてとなる。潘基文事務総長が式典であいさつに立ち、核兵器なき世界の実現を訴える。

 被爆地から世界に向けた力強いメッセージとなることだろう。

 オバマ米大統領は昨年4月のプラハ演説で「米国は核兵器を使用した唯一の核保有国として、核兵器のない世界に向けて行動する道義的責任がある」と明言した。

 ルース大使の式典参加は、オバマ政権の核軍縮に向けた強い意思表示と見ることも出来る。

 日米両国は同盟の絆(きずな)で結ばれているが、広島、長崎への原爆投下をめぐる両国の認識には依然として隔たりがある。

 原爆使用により本土上陸作戦が回避され、数多くの米将兵の生命が救われたとする見方が米国では依然根強い。

 ルース大使が参列する理由について、「第2次大戦のすべての犠牲者に敬意を示すため」と米政府は説明している。原爆投下への謝罪が表明されるわけではない。

 しかし、大使の参列は、原爆投下をめぐる日米の溝を埋めていく上で意義深い一歩と言える。

 将来、オバマ大統領自身の被爆地訪問も期待されよう。

 今年4月には米露両国が新戦略兵器削減条約(新START)に署名するなど、核軍縮への潮流は確かなものとなりつつある。

 しかし、一方で北朝鮮は核開発を続けている。北朝鮮の核の脅威や中国の軍事大国化という現実を見れば、日本にとって米国の「核の傘」は不可欠だ。

 広島市の秋葉忠利市長が式典で行う平和宣言は、「核の傘」からの離脱や非核三原則の法制化を日本政府に求めるという。現実を踏まえた議論とは到底言い難い。

 米国の核抑止力を機能させるためには、非核三原則の「持ち込ませず」についても、核搭載艦船の寄港・通過などは認めることを検討すべきだろう。

 広島、長崎に原爆を投下されても、「核の傘」に頼らざるを得ない――。そうした深いジレンマの下で、核軍縮、核不拡散をどう世界に訴えていくか。日本に課せられた大きな課題である。

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