American Combat Units Leave Iraq with Many Matters Unresolved

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米戦闘部隊 多くの課題残しイラク去る

米軍の戦闘部隊が「8月末まで」の予定通りイラクから撤退した。開戦から7年5カ月余り。米兵の死者は4400人に達し、国内対立やテロも合わせイラクの民間人およそ10万人が犠牲になった。戦闘部隊撤退は大きな節目だが、安定にはなお遠い中で多くの課題を後に残す。

 ブッシュ前米大統領が開戦の大義名分としたフセイン政権による大量破壊兵器開発の物証は見つからず、中東民主化の目標もあいまいになった。その後は、イラク情勢の一段の悪化を抑えるとともに、イラク戦争の政治的な後遺症から抜け出すことに米国の目標は事実上変わった。

 オバマ大統領はイスラム世界との相互信頼関係の構築を唱え、イラクからの撤収を進めた。一方で、米軍を増派したアフガニスタンの情勢は好転せず、中東和平や対イラン政策でも外交の成果はまだ乏しい。

 イラクでは政治空白が長引いている。3月の議会選から半年近くたつのに新政権のメドが立たない。2007年を境に治安はかなり改善したが、政治空白のすき間を突くようにテロが再び目立つようになった。

 治安権限の移譲を受けたイラクの軍・警察の能力はなお不十分で、イラク軍幹部が「あと10年は米軍の支援が要る」と漏らすほどだ。戦闘部隊の撤退後も当面5万人弱の米軍は残り、イラク軍の訓練や情報収集などに当たる。イラク政府の要請があれば、有事の戦闘で支援する備えもとる。来年末の米軍完全撤退の期限までに、イラク側の治安維持能力を整えることが重要な課題になる。

 イラクはイランの隣国であるとともにサウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦など有力なエネルギー資源産出国に連なり、シリア、トルコなど地中海岸諸国とも隣接する。中東の要に位置する地政学的に重要な国が不安定なままでは、世界の安全保障にも悪影響が続く。

 米国内の厭戦(えんせん)気分は強いが、米国がイラクを継続的に支援する枠組みも重要だ。安定確保に必要なら、イラク側と協定を結んで来年末以降も一定規模の米軍を残す選択肢を排除すべきではない。

 外資の参入による資源開発が決まり、外国企業幹部のイラク訪問も増えてきた半面、長い停電が続くなど復興は遅れ気味だ。イラク復興支援は、日本や欧州諸国、アラブ諸国も含めた国際社会全体の課題である。

 イラク側の責任も問われる。治安確保と復興促進のためにも、主要な政治勢力は互いに譲って合意点を見いだし、早急に新しい政権を発足させる必要がある。

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