Increasing the Importance of Alliance Reconstruction

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日米首脳会談 重要性が増す同盟の再構築(9月25日付・読売社説)

 中国が領土や海洋権益の拡張に向け強硬一辺倒の姿勢に走り、アジアの平和と安定が損なわれる事態を避けるには、日米同盟をより揺るぎないものに再構築することが肝要だ。

 菅首相とオバマ米大統領が会談し、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件に関連して、日米両国が中国の動向を注視し、緊密に連携することで合意した。日米同盟が日米とアジアに加え世界の平和と安定の礎との考えでも一致した。

 尖閣問題における中国の強硬姿勢の背景には、ぎくしゃくした日米関係の間隙(かんげき)を中国が突いている、との見方が少なくない。

 中国の温家宝首相がオバマ大統領との会談で、ゲーツ米国防長官の訪中を招請したのも、日米を分断する狙いと見られている。

 それだけに、日米両首脳が、対中国関係での日米連携と同盟の重要性を確認した意義は大きい。

 首脳会談に先立つ日米外相会談では、クリントン米国務長官が、「尖閣諸島には、日米安保条約5条が適用される」と明言した。

 過去には、米国による尖閣諸島の防衛義務について、あいまいな立場を取る米高官もいた。国務長官が義務を再確認したのは、日本への側面支援にほかならない。

 無論、漁船衝突事件は日中2国間の外交問題だが、同様の事態を繰り返さないためにも、日米同盟の重要性は増している。

 ところが、昨年の民主党政権発足以来の日米関係は迷走続きのうえ、今後も楽観できない。

 菅首相が会談で、米軍普天間飛行場移設について「沖縄の難しい課題」との表現で地元の反対に言及したように、沖縄県名護市への移設を定めた5月の日米合意を進めるメドは立っていない。

 11月の大統領来日に向けた同盟深化の作業や、年内に決着させる必要がある在日米軍駐留経費の日米交渉も進展していない。

 菅首相が日米関係強化の3本柱として、安保、経済、文化・人的交流を挙げたのも、安保だけでは成果が望めないため、「合わせ技」を目指す苦肉の策と言える。

 クリントン長官は9月上旬の演説で、アジアの同盟国を「韓国、日本、豪州」と語った。従来の言い回しと比べて、日本と韓国の順序が入れ替わった。米国が最近、韓国を重視しているのは事実で、これを軽視すべきではない。

 日本が米国の信頼に足る同盟国であり続けるためには、従来以上に国際的な役割を果たし、普天間のような困難な問題でもきちんと結果を出すことが欠かせない。

(2010年9月25日01時16分 読売新聞)

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