Strengthening Relations with China

<--

対中外交の巻き返しには何が必要か

中国政府が尖閣諸島沖の衝突事件で、日本政府の謝罪と賠償を求めている。これに対し、菅直人首相は「全く応じるつもりはない」と拒否した。当然の反応だ。

 そもそも、今回の事件は尖閣諸島沖の日本領海に入ってきた中国漁船に対し、海上保安庁の巡視船が退去を促そうとして起きた。

 仙谷由人官房長官は衝突で破損した巡視船を原状回復する費用について、外交ルートを通じて中国側に請求する意向も示している。妥当な主張といえる。

 だが、日本に謝罪要求を突きつけたばかりの中国側が、直ちに歩み寄る兆しはない。日本から譲歩を引き出そうと、さらに圧力を強める可能性も否定できまい。

 菅政権が尖閣諸島における日本の主権を守り、対中外交の巻き返しを図るにはどうすればよいのか。その答えを見つけるには中国がなぜ、ここまで日本に強気に出られるのか、その原因を分析することが先決だ。

 ひとつの原因は、鳩山前政権が未熟な外交で日米同盟を傷つけたことにある。鳩山由紀夫前首相は当初、在日米軍による抑止力の意味すら知らなかった。この現実をみて、中国が「日本はくみしやすい」と思ったとしても不思議ではない。

 第二に、中国は海軍力の急速な増強によって、アジアの海洋権益をめぐり、自国の主張を押し通せるという自信を強めている。すでに南シナ海の南沙諸島問題では顕著だが、尖閣諸島への対応もその表れだろう。

 だとすれば、菅政権がやるべきことは明確だ。まず、尖閣諸島も含めた日本の防衛のあり方についてもっと真剣に検討し、米側との連携を深める必要がある。

 もう一つは、中国軍の海洋進出への懸念を共有する東南アジア諸国や、韓国、インドと協力し、多国間で中国に自制を求める構図を築くことだ。菅首相は来月以降の一連の国際会議で、そうした首脳外交を展開してほしい。

 こうした外交は国内世論の強い支持がなければ長続きしない。その意味でも、先週、突然船長が釈放された詳しい経緯を明らかにしてもらいたい。検察独自の判断であり、政治介入はなかったという政府の釈明には説得力がない。菅政権はこの点をきちんと説明する責任がある。

 中国の台頭が生み出すさまざまな変化に対応するには、日本単独ではなく、国際社会と連携していかなければ難しい。今回の事件をめぐる日中対立は、まさにこんな現実を突きつけている。

About this publication