The Burden of Loan Repayment on the Federal Reserve

<--

米銀にローン買い戻しの重荷

2010/10/23付

 リーマン・ショックから2年以上たった今も「住宅」は米国の金融システムの病巣である。米大手銀行の2010年7~9月期決算で、それが改めて分かった。

 決算で目についたのは全体の貸し出しの減少だ。JPモルガン・チェース、シティグループ、バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)、ウェルズ・ファーゴの四大銀行の9月末の合計貸出残高は3兆ドル強と、6月末から3%減った。

 銀行が企業や個人にお金を十分に回せないのは、自社の財務内容に不安を抱えているからだ。

 米銀の不安は2つある。

 1つは住宅ローンの買い戻し問題だ。政府系の住宅金融公社2社が銀行から買い取ったローンのなかに、銀行が借り手の年収などをよく審査しなかったものがあったとして、銀行に買い戻すよう求めている。

 格付け会社フィッチ・レーティングスによれば、四大銀行は買い戻しに伴い最大で合計420億ドル(3兆4千億円)の損失計上を迫られる可能性があるという。

 また証券化商品への投資で損失を被った民間の資産運用会社も、銀行が同商品の裏づけとなる住宅ローンをきちんと審査していなかったとして、補償を求め始めた。

 バンカメは買い戻しなどの請求総額が9月末で128億ドルと、3カ月前より15%増えた。実際に支払い義務が生じる事態に備え、引当金を44億ドルまで積んだ。

 米銀のもう1つの不安は、返済の行きづまった借り手の住宅を差し押さえて競売にかけるのが難しくなったことだ。銀行が競売のため裁判所に出す書類について、債務者が正確に記されていないといった不備が指摘された。一部の銀行は書類を再点検するため競売を停止している。

 住宅ローンの買い戻しや競売の停止が長引けば、銀行は経営の不確実性が高まり、新規の貸し出しに慎重な姿勢を強めかねない。

 事業資金を借りにくい企業は雇用を増やせず、それが消費の低迷を通じて景気回復の妨げとなる。

 減少に向かう米銀の不良債権が再び増えれば信用収縮を招き、世界経済の波乱要因となる。米住宅問題に日本からも目を凝らしたい。

About this publication