前原誠司外相とクリントン米国務長官がハワイで会談した。中国によるレアアース(希土類)輸出制限問題や尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)などで緊密に協力することで一致した点を評価したい。
会談後の共同会見で、クリントン長官は尖閣諸島が日米安保条約5条(共同防衛)の「適用範囲」だと改めて強調、菅直人政権が検討中のTPP交渉参加を「歓迎し、後押ししたい」と明言した。前原氏はレアアース問題で「日米が緊密に連携して多角的資源外交を展開する」ことで合意したと述べた。
ハノイの東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議を皮切りに、来月中旬までの一連の外交舞台で、日米は安保・経済両面で強引な権益拡大を図る中国と対峙(たいじ)する正念場を迎える。日米を軸に環太平洋の民主主義諸国を結集し、日米首脳会談を実のあるものにすることが決定的に重要だ。
そのためには、安保面での強化とともにレアアースやTPP問題でも日米が足並みをそろえる必要がある。菅政権には、外相会談で示された連携を堅持し、国益をかけて米国とアジア諸国の信頼に応える外交を貫くよう求めたい。
今回の会談は、ハノイで開く東アジア・サミットや、来月の20カ国・地域(G20)首脳会合(ソウル)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議(横浜)に至る多国間の対中外交のせめぎ合いの中で、日米の結束が問われる最初の場だった。来月、オバマ米大統領を迎えて行われる日米首脳会談の地ならしでもあった。
オバマ氏は27日、G20とAPECの直前にインド初訪問の日程を発表した。ASEANは南シナ海で中国の海洋活動を牽制(けんせい)する方策を練っている。いずれも中国の独善的行動を阻止し、経済、資源、安保面で中国を包囲する流れだといってよい。レアアース調達の多角化やTPP構想も、その有力なツールと考えるべきだ。
日米にはそうした流れの主軸を担う責任がある。問題は菅首相らにそうした戦略的認識とそれを実行する決意があるかどうかだ。
同盟を深化させ、環太平洋諸国の期待に応えるには、普天間移設や在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)問題など同盟内の懸案を速やかに前進させることが不可欠であることもいうまでもない。
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