Will Mr. Obama Fight the War?

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発信箱:オバマ氏は戦争をするか=布施広(論説室)

 米国在勤時、知人から「この国は軍国主義的民主主義と考えると分かりやすい」と助言された。もちろん軍国主義とは違うのだが、軍事力こそ米国を世界一たらしめる源泉、崇高な理想を実現する手段、と考えているのは確かだろう。日本にはない感覚だ。ウソかまことか、戦没者追悼式典では大統領が夫人ともども星条旗を見上げて慟哭(どうこく)するのが再選のカギとも聞いた。知る限りでは80年代の式典での故レーガン大統領とナンシー夫人の姿が感動的だった。

 オバマ大統領はこうした演出があまり好きではあるまい。ホットかクールかという一昔前の言葉を使えば、オバマ氏は知的で理性的な層を代表するクールな大統領だ。就任以来、イラクやアフガニスタンで軍事行動の幕引きに動き、経済対策でもそれなりの実績を上げた。なのに中間選挙では支持基盤の民主党が大敗したのはなぜか--。クールなだけではダメなのだ。

 米国社会の揺り返しである。オバマ氏の「チェンジ」に飽き足りぬ、または失望した人々は、超ホットな「ティーパーティー(茶会)」派にも流れたが、大きな構図で言えば、ほどほどにホットな保守主義が地力を発揮して巻き返した。米国社会の岩盤ともいえる保守主義には、「軍国主義的民主主義」という妙な言葉で表現するしかない精神風土も含まれよう。

 さて、オバマ氏の次の目標は12年の大統領再選だ。81年就任のレーガン氏から数えて約30年、4人の前・元大統領は全員1期目に耳目を引く軍事行動を起こした。オバマ大統領もイラク、アフガンで軍事作戦を続けているが、こちらは前政権の後始末と撤収作業だ。新たな武力行使などない方がいいが、米軍の撤退だけで政権の求心力を強めるのも難しそうだ。この辺がオバマ氏のジレンマのように思える。

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