GM再上場 本格再建へのはるかな道のり(11月20日付・読売社説)
経営再建中の米自動車大手、ゼネラル・モーターズ(GM)が株式をニューヨーク証券取引所に再上場し、国有化を脱する一歩を踏み出した。
2009年6月に経営破綻(はたん)して上場廃止になってから、1年5か月というスピード再上場だ。しかし、前途は多難だ。政府傘下から独り立ちし復活できるかどうか、これからが正念場と言えよう。
GMは破綻後に、米国政府が株式の6割、カナダ政府が1割を保有する事実上の“国営GM”として再スタートした。
今回、再上場されたのは、その新生GMの株だ。売り出し価格は1株33ドルに設定され、取引開始時の初値は35ドルだった。値上がりしての取引は、投資家の期待の高さをうかがわせる。
短期間での再上場は、巨額な負債をほぼ一掃し、人員削減などの大リストラを徹底して業績をV字回復させたからだ。
今年7~9月期まで、3四半期連続で最終黒字を計上した。中国などの新興国販売が急増し、米国での売れ行きも回復基調だ。
米政府は今回、保有株の一部を売却し、約118億ドルの売却益を得た。この結果、GMへの米政府の持ち株比率は約37%に下がるが、筆頭株主にとどまる。
GM救済に米政府は公的資金約500億ドルを投じたが、GMはこれまで100億ドルを返済した。
政府は、今回の売却益を未回収分の約400億ドルの一部に充てる。残りの約300億ドルについても、保有株を売却して早期に全額回収したい考えだが、GMの本格再建が不可欠だ。
しかし、先行きは楽観できまい。スポーツ用多目的車(SUV)など大型車頼みが改善されず、環境対応のエコカーや小型車開発の出遅れも解消できていない。
競争相手の日産自動車は来月から日米で、電気自動車(EV)のリーフを発売する。トヨタ自動車はハイブリッド車の充実だけでなく、提携先の米ベンチャー、テスラ・モーターズと共同開発したEVを12年に発売する予定だ。
エコカー競争が過熱する中、GMはプラグインハイブリッド車「シボレー・ボルト」を近く発売する。再生の象徴としており、この売れ行きが焦点となる。
GMが好調な中国市場なども各メーカーの主戦場となっており、GMの牙城が揺らぎかねない。
技術革新を進め、売れる車をどう市場に提供していくか。本格再建を目指すGMの試練はまだ始まったばかりである。
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