It Is Essential That a Sincere Treaty for Nuclear Disarmament between America and Russia Be Carried Out

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米露核軍縮 誠実な条約履行が重要だ

米国とロシアの新戦略兵器削減条約(新START)の批准が、米上院で承認された。近くオバマ大統領が批准書に署名する。

 ロシアの批准も確実で、条約は年明けには発効する見通しだ。

 米露両国には、条約を誠実に履行してもらいたい。

 条約に基づき、米露両国は、発効から7年以内に、戦略核弾頭の配備数の上限を現在より約30%減らし、1550発ずつとする。長距離ミサイルなど核弾頭の運搬手段も配備数を700までに制限する。核施設の相互査察も行う。

 両国は、核兵器の削減過程を確実に検証し合い、信頼を醸成していくことが重要だ。

 ロシアは、米国が欧州へのミサイル防衛(MD)システムの配備を強行すれば、条約から脱退もありうると警告している。MDによって自国の核戦力の威力がそがれることを懸念しているためだ。

 MDをめぐる対立が、肝心の核削減を不十分なものに終わらせてはならない。

 新STARTの目標を達成しても、世界にはなお何千発もの核兵器が残る。その約9割を保有する米露両国は、さらに核削減努力を続ける必要がある。

 条約では、実戦配備から外して備蓄に回した戦略核弾頭や、比較的威力の小さな戦術核兵器は、削減の対象になっていない。

 オバマ政権は、戦術核の削減にも取り組む意向を示している。ロシアもそれに応えて新たな核削減交渉を始めるべきだ。

 米露の核軍縮を、他の核保有国の核削減につなげることも重要な課題だ。

 とくに、核戦力の増強と近代化を続ける中国に対し、核軍備の拡張をやめ、核軍縮に乗り出すよう、米露両国は積極的に促していかなければならない。

 世界には、国際社会の警告を無視して核開発を続ける北朝鮮やイランなどの国がある。いくら断念するよう求めても、米露が自ら核兵器を減らさなければ、こうした国々は聞く耳を持つまい。

 核兵器を増やさないようにするため、米露は、核兵器の原料となるプルトニウムや高濃縮ウランの生産を禁じるカットオフ条約の交渉開始にも力を尽くすべきだ。

 ゲーツ米国防長官は、新STARTによって、核拡散防止における米国の指導的役割が「強化される」と自賛している。米国が、核実験全面禁止条約(CTBT)を批准するなら、その指導力はさらに強まるはずだ。

(2010年12月24日01時09分 読売新聞)

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