The Shaken International Order and How to Build the Asia-Pacific Era

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中国やインドといった新興国の台頭で、米国を軸に日本や欧州諸国などが支えてきた国際秩序は大きく揺らいでいる。

 昨年、国内総生産(GDP)で日本を抜いたとみられる中国は今年も軍事力を増強しつつ、国際舞台で存在感を発揮するだろう。

 一方、米国は、イラクとアフガニスタンでの「二つの戦争」、史上最悪の財政赤字、依然深刻な雇用状況などの懸案で手いっぱいだ。オバマ政権は、来年の大統領選を控え、国内世論の動向を最優先する傾向が顕著になろう。

 日本や欧州でも政治経済の混迷が続いている。

 グローバル化が進む中、世界が、米国による一極支配から、新興国も加えた多極化の時代へと変貌するのは避けられない。

 こうした環境の変化に対応して、新しい秩序をどう形成していくべきか。「世界の成長センター」であるアジア太平洋地域にとって極めて重要な課題である。

 ◆地域安定へ米中改善を◆

 今年の世界潮流を占う上で注目されるのが、今月19日にワシントンで開かれるオバマ大統領と胡錦濤国家主席の米中首脳会談だ。

 会談では、相互の信頼をどう回復していくかが焦点となる。経済的な相互依存を深める両国だが、昨年来、きしみが目立つ。

 中国は、台湾への武器売却に反発し、米国との高官級軍事交流を年末まで停止した。外洋に向かって海軍力を拡大し、米国の勢力圏を脅かしている。中国がかつて標(ひょう)榜(ぼう)していた「平和的台頭」からは大きく様変わりした。

 米国も、こうした中国に警戒心を強めている。東シナ海や南シナ海の島をめぐる権益争いでは、中国と対立する日本などの側を支持した。中国により海洋の自由航行が脅かされることへの危機感があるからだ。

 首脳会談を機に、両国は関係をリセットし、信頼醸成の枠組みを構築していく責任がある。米中関係の改善は、アジア太平洋地域の安定と繁栄に寄与するものだ。

 ◆インドも新秩序の柱に◆

 アジア太平洋地域ではすでに、国際環境の変化に応じ、さまざまな枠組みが始動している。

 日本は、こうした枠組みに積極的に参加し、インドを含めた広範な東アジア、太平洋地域の安定につながるプロセス作りで中心的な役割を果たさねばならない。

 経済的な秩序作りでは、今年11月、ハワイでアジア太平洋経済協力会議(APEC)を主宰する米国が、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉の早期妥結を目指している。

 中国は、東南アジア諸国連合に日中韓を加えた「ASEANプラス3」を、中国を核とした自由貿易圏として提案している。

 日本は、まず、TPPに参加し、将来的には、中国やインドをも取り込んだ巨大な自由貿易圏の誕生に尽力すべきであろう。

 域内の各国が互いの結びつきを強める中で、安全保障上の懸案に対処しうる信頼醸成の枠組みを機能させていくことが、地域全体の安定化につながる。

 その意味で、今年10月、インドネシアで開催される予定の東アジア首脳会議には期待したい。

 6回目を迎える今度の会議で、ASEAN10か国と日中韓、ニュージーランド、オーストラリア、インドの16か国に、米露が初めて加わる。従来の経済分野での協議と並行して、政治・安全保障分野での取り組みが強化される。

 新しい国際秩序作りには、日米中韓などと並ぶ主柱の一つとしてインドの存在が欠かせない。

 中国に匹敵する巨大な市場を持ち、地政学的には中国を牽制(けんせい)できる。何より、民主主義や法の支配という価値観を日米などと共有している大国である。

 日本は、インドとの関係を一層緊密にする必要があろう。

 ◆北の核へ国際圧力を◆

 アジア太平洋地域では、核開発を続ける北朝鮮が最大の不安定要因になっている。

 一貫して北朝鮮を擁護する中国に対しても、北朝鮮に核放棄を迫るべきだとの国際社会からの圧力が高まってきた。

 6か国協議に参加する日米中韓露が、北朝鮮の核放棄という共通の目標の達成に向け、成果を上げることができるのかどうか。

 今年は、6か国協議という枠組みの実効性と将来性が問われなければならない。

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