Obama’s Reversal and the Route of International Cooperation

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オバマ政権折り返し 国際協調の路線を貫け ’11/1/11

 米国のオバマ大統領が今月、任期4年の折り返し点を迎える。

 昨年の中間選挙は与党・民主党が大敗する結果となった。下院では共和党が多数を占める「ねじれ議会」の逆風に直面している。来年秋に迫った大統領選で、再選を危ぶむ声も出ているようだ。

 議会内の摩擦を小さくしようと政権の姿勢が「内向き」になるのは避けられまい。気になるのは国際協調を掲げてきた外交路線への影響だ。

 2年前の大統領就任式は記憶に新しい。ワシントンに200万人が集まり、熱気に包まれた。ブッシュ前政権が対決姿勢をむきだしにしたイスラム世界にも「握手をしよう」と呼び掛け、一国主義からの「チェンジ」を印象付けた。

 だが強力な外交に欠かせない足元の政権基盤は揺らぎつつある。

 貧困層が恩恵を受ける医療保険改革や、破綻したゼネラル・モーターズ(GM)の実質国有化などの政策が「大きな政府」だとして共和党などから批判を浴びている。さらには景気や雇用の回復が期待ほど進まず、民主党支持者の離反も招いてしまった。

 今では前政権時代に批判したはずの高所得者減税を継続するなど、共和党に秋波を送らざるを得ない状況だ。当初の理念が薄らいできているように見える。

 こうした妥協を外交や安全保障の分野でも迫られるかもしれない。その最初の関門となるのが10万人近くの米兵が駐留しているアフガニスタンの出口戦略だろう。

 イラクからの完全撤退に続き、この7月にアフガンでも撤兵を開始する構えだ。一方で反政府勢力タリバンとの戦闘は泥沼化したまま。イスラム勢力に対するオバマ政権の姿勢に「弱腰」との批判もあるだけに、戦略の見直しを迫られることもありうる。

 プラハ演説で掲げた「核兵器のない世界」への道筋も一段と不透明さを増す。昨年末、やっとロシアとの核軍縮条約「新START」の批准承認にこぎつけたほかは、前に進みそうにない。

 イランではウラン濃縮の動きが続いている。外交交渉での解決を目指す姿勢だが、議会で強硬論が台頭しないとも限らない。

 これまで米国は国内政治に行き詰まると、海外での軍事行動で矛先をかわしてきたとされる。同じような愚挙は許されまい。

 昨年来、朝鮮半島や日中間の緊張が高まっている東アジア。こちらも一段と難しい外交のかじ取りが迫られよう。

 来週には米中首脳会談も予定されている。世界第2の経済大国になった中国に、軍事力増強の自制をどう促していくか。北朝鮮についても「暴発」を抑えながら、核開発放棄のテーブルに着かせる役割は重い。

 一方、日本に対しては今以上の米軍への協力を求めてくることも考えられる。

 インドなど新興国が発言力を増す多極化の時代でもある。日米同盟に頼りがちだった日本の外交戦略も新たな視点が要る。

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