Obama’s Address: In Pursuit of Harmony and the Realization of an Ideology

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オバマ演説 融和進め理想の実現を(1月27日)

「われわれが直面する問題は政党や政治よりも大きい」-。就任から2年を経たオバマ米大統領の一般教書演説は、強い危機感をにじませていた。

昨秋の中間選挙で与党民主党が大敗し、上院を民主党、下院を野党共和党が握る「ねじれ議会」が年明けから始まった。

オバマ氏は演説で「新たな法律は民主、共和両党がともに支持しなければ成立しない」と、事態の深刻さを認めた。政治対立はかつてないほど深い。来年の大統領選を前に共和党はさらに攻勢を強めるだろう。

失業率はなお10%近い高水準にあり、史上最悪の財政赤字はいっこうに改善しない。

このまま政治闘争に明け暮れていいわけはない。米国の経済が上向かなければ国際社会もリーマンショック後の世界不況から抜け出せない。

アリゾナ州で起きた銃乱射事件には、政治対立を背景とする国民の間の亀裂が影を投げかけているとの見方が広がっている。

オバマ氏は事件に触れ「われわれが米国という家族の一員であることに気付かせてくれた」と、国民の結束、与野党の協調を呼びかけた。

米国は現在の政治的混迷を越えて、財政や雇用対策を着実に進めていかなければならない。

注目されたのは、オバマ氏がねじれ議会を意識して打ち出した中道寄りの経済政策だ。

25年ぶりの抜本的な法人税率引き下げに加え、政策的経費を今後5年間据え置く考えを表明した。

その上で中国やインドという新興国の台頭を指摘し、米国自身も国際的な競争力を強化して雇用増を図る必要性を強調した。

これまでの民主党路線を転換したオバマ氏は支持率を上げる一方、党内に反発の声も生んでいる。今後政策を実行するに当たり、極めて微妙なかじ取りを強いられよう。

米国が陥っている困難な政治状況は、オバマ氏が掲げる内政外交の「チェンジ(変革)」に対し、抵抗がいかに強いかを物語る。

だがオバマ氏には当初の理想を忘れてほしくない。

今回の演説の大半は内政に割かれ、国際問題については北朝鮮に核放棄を迫り、イラクやアフガニスタンの安定化に努力する考えを示すなど従来方針の確認にとどまった。

オバマ氏が主導する核軍縮の分野では、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准や戦術核兵器の削減などが課題となっている。

核削減に消極姿勢を取る共和党とも対話を重ねて融和を進め、「核なき世界」の進展に、強い指導力を発揮するよう求めたい。

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