日米同盟の根幹である米軍の抑止力をないがしろにしてはなるまい。
中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発など日本の安全保障環境は悪化し、同盟に基づく抑止力が今ほど必要なときはない。鳩山由紀夫前首相が米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設を決断する根拠とした米海兵隊の抑止力の大切さについて「方便だった」と発言した問題への怒りは、国会を超えて沖縄の地元に広がり、日米関係への悪影響すら懸念されている。
菅直人首相が国会で鳩山発言を退けたのは当然だが、それだけでは到底足りない。日米安保体制下で在日米軍や沖縄の海兵隊が担う抑止力の意義と役割を改めて国民に説明し、普天間移設の早期履行に全力を傾けるべきだ。
鳩山氏は首相だった昨年5月、普天間移設先を「県外、できれば国外」とする自らの主張を撤回して名護市辺野古とする日米合意を結んだ。その理由が「学べば学ぶにつけて海兵隊の抑止力の大切さが分かった」との説明だった。
これを「方便だった」とする発言は、沖縄に海兵隊が常駐することで果たされる抑止力の意義と役割を「全く学んでいなかった」ことを認めたも同然である。
鳩山氏が「米軍が辺野古にこだわるのは沖縄がパラダイスのように居心地が良いためだ」と発言したのも問題だ。自民党の中谷元・元防衛庁長官は衆院予算委で「米兵が故郷を離れ、命をかけて日本の安全にどれほど使命感を持って仕事しているか分かっているか」と非難した。まさに米国民一般の感情まで傷つけ、同盟の根幹を支える日米の相互信頼を無にする暴言といわざるを得ない。
それでなくとも、菅政権は昨夏以来、代替施設の形状や工法の決定を先送りしてきた。日本に配慮して静観してきたゲーツ米国防長官が16日、米下院の公聴会で「今春遅くまでに解決を望む」と改めてクギを刺したのは、鳩山発言の影響ととれなくもない。
野党は鳩山氏の参考人招致も求めた。菅首相は国会答弁だけでなく、鳩山氏を呼んで厳しく叱責するなど「同盟基軸」の揺るがぬ方針を行動で示すべきだろう。
前原誠司外相、北沢俊美防衛相らも弁明に終始している場合ではない。沖縄県民らに抑止力の大切さを何度でも働きかけ、普天間問題を前進させてほしい。
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