米高官沖縄中傷 同盟関係損なう不穏当な発言(3月10日付・読売社説)
日米同盟を傷つける、極めて不穏当な発言だと言うほかない。
米国務省のケビン・メア日本部長が昨年12月、沖縄県民について「日本政府に対するごまかしとゆすりの名人だ」などと発言していたことが明らかになった。
カート・キャンベル国務次官補は、「報道内容は正確ではないし、米政府の見解を反映したものではない」と釈明しながらも、日本側に謝罪する意向を示した。
ルース駐日大使に対する枝野官房長官の抗議や、沖縄県議会などによる抗議決議の採択を踏まえ、事態の沈静化を図ったのだろう。米側の謝罪は当然である。
メア部長発言は、沖縄を訪問する予定の米国大学生に対する講義の中で出たものだ。オフレコが条件だったという。
学生らが作成した発言録によると、メア部長は、「日本人は合意文化をゆすりの手段に使う。合意を追い求めるふりをし、できるだけ多くの金を得ようとする」などと語ったとされる。
沖縄が米軍基地受け入れの見返りに、日本政府に沖縄振興策を求めているとの批判と見られる。
沖縄県民を「怠惰」と決めつけるなど、悪意に満ちた中傷的な表現もあったという。
メア部長は、沖縄総領事などを務めた知日派として知られる。発言の背景には、民主党政権が稚拙な外交で、米軍普天間飛行場の移設問題を迷走させたことなどに対する苛立(いらだ)ちがあるのだろう。
一連の発言が真実ならば、過重な基地負担を強いられてきた沖縄県民だけでなく、日本国民全体を傷つけるものだ。日米双方が長年かけて築いてきた信頼関係をも崩壊させかねない。
単なる失言の域を越えており、到底見過ごすことはできない。
しかし、今回の発言が日米関係全体に悪影響を及ぼす事態は避けなければならない。
鳩山前政権で悪化した同盟関係の修復に積極的で、米国人脈も豊富だった前原誠司前外相は、外国人献金問題のため、わずか約6か月で辞任した。後任には、松本剛明外務副大臣が昇格した。
松本新外相は、日米関係を日本外交の基軸とする現在の路線を堅持し、昨年来の同盟深化の作業を着実に進めてほしい。メア部長発言でより困難になった普天間問題にも粘り強く取り組むべきだ。
北朝鮮の軍事的挑発や、中国、ロシアとの領土をめぐる摩擦で、日米同盟の重要性は一層増していることを忘れてはなるまい。
(2011年3月10日01時38分 読売新聞)
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