リビア軍事介入 虐殺防ぐための正当な行動だ
内戦状態にある北アフリカのリビアに、米英仏軍主力の多国籍軍が軍事介入した。
カダフィ政権側の戦車や装甲車を仏軍機などが爆撃し、防空施設を英米軍が巡航ミサイルで攻撃した。
今回の作戦は、国連安全保障理事会の決議1973に基づく正当な人道的介入である。決議は、政権側の攻撃にさらされる市民を保護するため、リビア上空に飛行禁止空域を設けるなど「占領以外のあらゆる措置」を認めている。
リビアでは、カダフィ圧政の打倒に立ち上がった反体制派が、地中海沿岸地域の東半分を一時掌握したが、軍備で圧倒する政権側が巻き返し、反体制派の拠点ベンガジが陥落寸前となっていた。
ベンガジ陥落に伴う虐殺を回避するためには、軍事介入はやむを得ない選択だった。
安保理決議の採決では、中国、ロシア、ドイツ、インド、ブラジルの5か国が棄権した。しかし、反対票を投じなかったことで暗黙の了解を与えたとも言えよう。
ドイツの場合、作戦参加国の負担を減らすため、アフガニスタンでの任務を拡大するという。軍事介入の賛否をめぐって世界が二つに割れているわけではない。
カダフィ氏は欧米の軍事作戦を「第2の十字軍」だと非難している。キリスト教徒の十字軍がイスラム世界を蹂躙(じゅうりん)した史実を引き合いに出し、アラブの国々の反発をあおろうという魂胆だろう。
だが、今回の作戦は、イスラム教徒の対米不信を招いた2003年のイラク戦争とは異なる。
軍事介入を求めたのは、圧政に苦しむリビア国民であり、アラブ連盟も支持した。根本的に構図が違うのである。
カダフィ政権は、安保理決議後に停戦を約束しながら反故(ほご)にし、徹底抗戦の構えに転じた。しかし残された道は、即時停戦と東部からの撤退以外にはあるまい。
今回の作戦は、仏英両国が主導し、米国が追随する形になった。仏英両首脳が介入を急いだ背景には、独裁政権崩壊の先例となったチュニジアやエジプトへの対応で後手に回り、国内外の批判を浴びた苦い経験もあるのだろう。
日本政府が、政権側の暴力即時停止を求める立場から軍事行動に支持を表明したのは、当然だ。
産油国リビアで混乱が長期化すれば、原油価格が高騰し、世界経済のみならず、大震災からの復興を目指す日本にも影響する。日本は、リビアの早期安定化にも協力を惜しむべきではない。
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