[米国務長官来日] 危機脱出へ協力を仰げ
クリントン米国務長官が来日し、菅直人首相、松本剛明外相と会談、東日本大震災からの復旧・復興や東京電力福島第1原発事故への対応で引き続き全面協力する意向を伝えた。
菅首相は「米国の支援は永久に忘れない。全国民を代表してお礼申し上げる」と述べた。米側の支援には率直に感謝したい。
深刻な事態が続く原発事故を収束させるためにも、米国が有する最先端の汚染除去技術が必要だ。1979年の米スリーマイル島原発事故の経験なども頼りになろう。
原発事故はもはや国内にとどまらず、国際社会にとって重大な懸案だ。日本は事故収束を最優先に、躊躇(ちゅうちょ)することなく米国をはじめ国際社会の協力を仰ぐべきだ。
震災後、自衛隊と米軍の協力はこれまでにない規模に広がった。米軍は「トモダチ作戦」と銘打って、在沖縄海兵隊を含む人員約2万人を動員し、空母など艦船約20隻、航空機約160機を使って救援活動や行方不明者の捜索に当たった。
原発事故でも、原子炉を冷却するための真水や無人偵察機による現場写真の提供、放射性物質で汚染された場所でも活動できる専門部隊の派遣など、協力は多岐にわたる。
クリントン氏の来日は、震災後に米国側が日本に働き掛けたものだ。日本支援に積極的に動く背景には単に同盟国というだけでなく、いくつかの要因がある。
第一に、自動車部品や電子部品などの生産工場が被災して日本からの部品・素材が供給不足となり、回復が遅れると国際的な供給網に影響が出ることだ。
先の20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が共同声明で「経済的な不確実性を高めた」と言及したのは、その証しといえる。
第二に、世界最多の原発104基が稼働する米国としては、福島原発事故による「反原発」機運の高まりを懸念していることが挙げられる。
オバマ大統領は3月末の演説で、今回の事故を教訓に危険な核物質・技術の拡散を防いで各国が安全に原発を稼働させるための新たな枠組みづくりを訴えている。
現在、求められているのは原発事故のこれ以上の事態悪化を食い止めるとともに、震災復興の作業を迅速に進めることだ。そのためには国際協力も得て政官民が力を結集して取り組み、一日も早く未曽有の危機から抜け出すことが重要である。
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