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Posted on May 3, 2011.
ビンラーディン テロとの戦いは終わらない(5月3日付・読売社説)
米同時テロの首謀者とされるウサマ・ビンラーディンが米当局によって殺害された。
2001年9月11日の同時テロでは、日本人24人を含む約3000人が死亡した。米国は、ビンラーディンが率いる国際テロ組織アル・カーイダの犯行と断定し、総力を挙げて追跡してきた。
ビンラーディンはアフガニスタンとパキスタンの国境地帯に潜んでいると見られていたが、意外にも、隠れ家はパキスタンの首都イスラマバードの近郊にあった。
米国が主導する「テロとの戦い」にとって、首謀者の死は、大きな成果だ。オバマ大統領は「正義が成し遂げられた」と述べた。菅首相も「テロ対策の顕著な前進」を歓迎する談話を出した。
ただ、これでテロが終息するわけではない。殺害に反発して、むしろ報復テロの可能性は高まる恐れがある。
米国はじめ国際社会は、従前にも増して、テロへの警戒を怠ってはならない。日本が自衛隊駐屯地の警備態勢を強化するなどの措置を講じるのは当然だ。
ビンラーディン殺害は、10年近くにわたり行方を追い続けてきた米政権の執念が実ったものだ。大統領の発表に、ホワイトハウスの前に詰めかけた多数の市民が快哉(かいさい)を叫んだのも無理はない。
だが、大統領自身が認めた通り、テロとの戦いは今後も続く。
米国人を殺すことがイスラム教徒の義務だとするビンラーディンの考えを信奉するテロ組織は、北アフリカから東南アジアにまで広がっている。欧米諸国内にも、共鳴者が生まれている。
その死は「殉教」とみなされ、信奉者が増える懸念すらある。
イスラム世界には、「テロとの戦い」を掲げてアフガンやイラクに進攻した米国への、根強い反感がある。ビンラーディン殺害が反米感情をさらに助長させるようなことがあってはなるまい。
アフガンでは、ビンラーディンの影響力が強かった反政府勢力タリバンの動向が注目される。
米国は責任を持って、アフガンとイラクに安定をもたらす必要がある。それが米国への信頼を高めることになろう。
中東・北アフリカでは民主化運動が拡大している。退陣を迫られた強権的指導者の大半は米主導のテロ掃討作戦を支持してきた。
民主化運動の帰趨(きすう)と、ビンラーディン殺害が、今後の「テロとの戦い」にどう影響するのかも、国際社会は見極める必要がある。
(2011年5月3日01時23分 読売新聞)
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