Killing of 9/11 Ringleader Is a Fresh Starting Point to Eradicating Terrorism

<--

9・11首謀者殺害 テロ根絶の新たな出発点に

2001年9月11日の米中枢同時テロを首謀した国際テロ組織アルカイダの指導者、ウサマ・ビンラディン容疑者が米軍によって殺害された。世界を震撼(しんかん)させた惨劇から10年となる節目の年に、米政権が最大目標とする「テロとの戦い」は一つの区切りを迎えた。

 ただし、一件落着ではない。欧州諸国やロシア、パキスタン政府などは同容疑者殺害を評価しているが、パキスタンの武装勢力が米国攻撃を表明し、イスラム過激派は反発を強めているからだ。

 報復が報復を生む負の連鎖をいかに断ち切るか。厳密に言えば、国際社会は「テロ根絶」という究極的目標の新たな出発点に立ったというべきだろう。

 約3千人が犠牲となった同時テロ以降、米国は、ビンラディン容疑者をかくまっていたアフガニスタンを空爆。イスラム原理主義のタリバン政権を崩壊させ、引き続きイラクでも軍事作戦を展開し、フセイン政権をも崩壊させた。

 イラク侵攻以降、米軍兵士の死者は4400人に上り、イラク市民の犠牲者は11万人を超えるとされる。アフガンや周辺地域での米兵死者も1200人を超え、駐留外国兵を含めると2千人超に上る。

 見落としてならないのはアフガンでもイラク同様に多くの市民が巻き添えになり、米国に対する新たな憎悪を生んだことだ。テロとの戦いの代償はあまりにも大きい。

 アルカイダの近年の実体は、大掛かりなテロ行為よりも、アラブ諸国やアジアのイスラム過激派組織と緩やかに連携。世界のテロを鼓舞する宣伝活動が中心だったとされる。ことしになってアラブ諸国で相次ぐ非暴力の民主化運動はアルカイダの衰退の表れとの見方もある。職を失った若者や抑圧された民衆の怒りの矛先が、自国の独裁政権に向けられた格好だ。

 国際社会はテロ根絶に向けて、イスラム世界が抱える課題、矛盾と今こそ真剣に向き合う必要がある。市民の自由と公平な社会を求めるアラブ諸国での民主化の実現と併せ、長年の懸案である中東和平の前進が必要不可欠だ。

 第2、第3のビンラディンの誕生を阻止するためにも、米国を中心とする欧米諸国とイスラム世界との新たな関係構築を急がねばならない。「文明の衝突」をあおるのではなく、「文明の共生」を粘り強く訴え、実現する必要がある。

About this publication