Distance Grows Between Okinawa and the National Government over Airbase

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社説:普天間移設 政府と沖縄、広がる距離

 北沢俊美防衛相が沖縄を訪問し、仲井真弘多県知事と会談した。知事が米軍普天間飛行場の「県外移設」を求めたのに対し、防衛相はアジア太平洋地域の安定にとって日米同盟が重要であることを強調し、「(飛行場の同県名護市辺野古への移設などを盛り込んだ)日米合意を両国が真剣に追求しなければならない」と語った。移設先で合意に至る糸口はつかめず、日米合意実現の難しさを改めて示す結果となった。

 鳩山前政権末期の日米合意(昨年5月28日)からまもなく1年。この間、菅政権と沖縄の間で普天間問題はまったく進展していない。日米合意後、沖縄を覆ったのは、安全保障の恩恵を日本全体が享受しているのに、なぜ沖縄だけが過重な負担を背負わなければならないのか、という思いだった。政府は沖縄が持つ軍事面の地理的優位性を語るが、基地問題が本土による「差別」と考える沖縄の意識とはすれ違ったままだ。

 一方で、菅政権は日米合意履行を繰り返し表明し、辺野古に建設する滑走路を「埋め立て」方式とすることで米側と合意、最近、滑走路を「V字形」にすることも決めた。いずれも米側の主張に沿うもので、場所も形状も工法も自公政権が米側と合意した内容だ。菅政権は日米首脳会談前の外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会で移設方針を最終合意する考えのようだ。防衛相の訪沖もその環境整備である。

 しかし、辺野古への移設を進める日米両政府の方針と、沖縄の意識との落差は覆うべくもない。菅政権が日米合意に基づいて移設方針を具体化すればするほど、菅政権と沖縄の距離が、埋めがたいほどに広がっていくのは明らかである。

 知事、県議会、名護市長、同市議会、県内全市町村長はそろって県外移設を求めている。日米合意の2014年までの辺野古への移設が実現すると信じている政治家は政権内にもいないだろう。にもかかわらず、日米合意を前提にした方針を次々と確定させていく。その菅政権の姿は本音と米国向け建前の「二重基準」の使い分けのようにさえ映る。

 普天間問題の経緯を考えれば、解決にはある程度の時間をかける以外にないのではないか。しかし、一方で「世界一危険な基地」普天間飛行場の周辺住民に対する危険性の除去は緊急課題だ。普天間を今のまま使用し続ける事態は避けなければならない。

 日米合意は、沖縄の負担軽減策の一環として、訓練を含め「米軍の活動の沖縄県外への移転を拡充する」とうたっている。これを普天間飛行場に適用し、移設の実現まで、普天間の機能を県外に分散・移転する方策を真剣に探るべきである。

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