I Love New York: Solutions to Problems a Long Way Off

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アイ・ラブ・ニューヨーク 「問題解決」は遠く

 国際テロ組織アルカーイダの指導者、ウサマ・ビンラーディン容疑者殺害を受け、米中枢同時テロの現場である世界貿易センタービル跡地(グラウンド・ゼロ)周辺を歩くニューヨーク市民に「これで米国の問題は解決されたか」と聞いてみた。

 「経済にまだ問題を抱えている」(44歳、法律事務所勤務)「彼が死んでも、経済は変わらない」(46歳、大工)「(国家)債務問題が残っている」(63歳、交通基金勤務)「経済や移民問題がまだある」(32歳、法律事務所勤務)などと多くの市民が経済不安を理由に「問題は解決されていない」と答えたのだった。

 ニューヨーク州の財政危機は連邦政府と相似形で、失業率は高止まりし、財政赤字は歴史的な高水準でテコ入れしようにも財源がない。警官、公立学校の先生ですらリストラ対象だ。実際、米国民がテロで死亡する確率は交通事故で亡くなる確率よりも格段に低い。一方で、経済不安は日常生活に影を落とす。

 景気と犯罪発生率は逆比例の関係にあり、不景気になれば治安は悪化する。

 無数の花束と犠牲者への手紙がささげられ、悲しみとルサンチマン(怨念)が渦巻くグラウンド・ゼロのほとり。対照をなす市民のリアリストぶりにため息をついた。(松浦肇)

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