日米連携を息切れさせるな
人と人の関係がそうであるように、国同士もいくら美辞麗句でとりつくろったところで行動が伴わなければ、信頼が崩れる。会談で連携を演出した菅直人首相とオバマ米大統領には、そんな懸念を禁じ得ない。
菅首相が9月前半に訪米することになった。日米では当初、「今年前半」で合意していたが、ずれ込んだ。外交日程が予定通りに運ばないことは珍しくない。問題なのは首相の訪米が延びた理由だ。
いちばん大きな原因は、懸案である米軍普天間基地の移設問題だ。年前半の訪米日程はこの問題の進展が大前提だったが、作業はほとんど動いていない。
東日本大震災後、日米は被災地への支援や原子力発電所事故への対応で緊密に協力し、きずなを強めた。オバマ大統領は会談で「どれだけ時間がかかっても(復興を)支援する」と約束した。原発事故の協力はいまも続いている。
だが、震災からすでに2カ月半がたっている。そろそろ「3.11」前から積み残した懸案を処理しないと、協力の勢いは失われてしまう。
だからこそ、普天間問題の前進が欠かせない。カギを握るのが、6月開催で一致した外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)だ。
両国政府は当初の予定通り、この会合で普天間の代替基地の工法などを決め、移設への道筋をつける必要がある。
沖縄県名護市辺野古に移設する現行案には沖縄の反対が根強い。地元の一層の反発を招きかねないとして、両政府間の調整を先行させることには慎重論もある。
だが、このまま何もしなければ、米議会で浮上している現行案の見直し論が広がり、移設はもっと遠のく恐れがある。
市街地にある普天間の危険がこれからも残ることになれば、直接の影響を受けるのは沖縄の人々だ。菅政権はこの点を沖縄側に率直に説明し、理解を求めるしかない。
菅首相は震災で対応の決定を先送りした環太平洋経済連携協定(TPP)についても、早期に判断すると表明した。この約束を守るため、自ら国内調整に汗をかいてほしい。
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