Will the U.S. Economy Recover in the Second Half of the Year?

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Posted on June 19, 2011.

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 米経済の減速懸念が強まってきた。エネルギー価格の高止まりが主因だ。米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は「年後半にはいくぶん持ち直す」と言うが、市場の不安はぬぐえない。日本経済の回復シナリオにも影響するだけに、米当局の慎重な経済運営を望みたい。

 最近発表された5月の指標は総じて低調だ。非農業部門の雇用者数は前月比5万4000人の増加にとどまった。製造業景況感指数は27年ぶりの大幅な悪化となり、小売売上高は11カ月ぶりの減少に転じた。市場が景気の先行きに不安を抱くのは無理もないだろう。

 FRBが昨年11月に始めた量的緩和の第2弾(QE2)は、株高やドル安を演出した。これが個人消費や輸出、雇用などの改善を支えた。今はガソリンを含むエネルギー価格の高止まりが、家計の支出や企業の収益を圧迫している。東日本大震災によるサプライチェーン(供給網)寸断の影響もみられる。

 米国の実質経済成長率(前期比年率)は昨年10~12月期の3.1%から、1~3月期には1.8%に低下した。4~6月期も2%台にとどまるとの予測が多い。成長のペースが「想定よりやや遅い」というバーナンキ議長の不満はもっともだ。

 だが「景気の減速は一時的」との見方は変えていない。ガソリン高や震災の影響が徐々に薄れると判断している。議長は物価の上昇を警戒し、QE2を予定通り6月末で打ち切る構えだ。21~22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、米経済の見通しと金融政策のかじ取りを十分に点検してもらいたい。

 議長はQE2の打ち切り後も、現在の資金供給量を維持する方針だ。事実上のゼロ金利政策も続ける公算が大きい。野党・共和党が財政再建を強く求めているため、オバマ民主党政権は景気対策を打ちにくい。FRBの政策転換が米経済を失速させないよう注意する必要がある。

 市場にはQE3への期待も残る。しかし大量の資金供給が原油や穀物の価格を押し上げ、米国の景気減速と物価上昇が深刻になるとの見方もある。新興国へのマネー流入がインフレを悪化させる恐れもある。副作用の方が大きいのではないか。

 日本も無関心ではいられない。米経済がもたつくと、円高・ドル安の圧力がかかりやすくなる。「生産が正常化すれば、輸出主導で日本経済を立て直せる」という計算にも狂いが生じる。震災からの復旧・復興を急ぐだけでなく、中長期的な成長基盤を固める政策が欠かせない。

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