Withdrawal from Afghanistan: It Is Time to Move toward Peace

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アフガン撤兵―和平へ踏み出すときだ

10年ごしの戦争に、和平への転機が訪れるのだろうか。

オバマ米大統領が、アフガニスタンに駐留する米軍の撤退計画を発表した。7月から開始して年内に1万人、来年夏までに計3万3千人を引き揚げる。駐留する約10万人の約3分の1が撤収することになる。

「戦争の潮はひきつつある」とオバマ氏は語った。血みどろの戦闘の相手であるイスラム勢力タリバーンに対しても、「米国は和解のイニシアチブに参加する」と呼びかけた。

 流れを変えた最大の要因は、今年5月に国際テロ組織アルカイダの指導者、オサマ・ビンラディン容疑者を殺害したことだろう。米国が2001年にアフガニスタン攻撃に踏み切ったのは、当時のタリバーン政権が、かくまっていたビンラディン容疑者の引き渡しに応じなかったからだ。同時多発テロの首謀者がいなくなり、米国にとってアフガニスタンは死活的な利害ではなくなった。

もう一つは、米国の財政だ。リーマン・ショックの影響で米国の財政赤字は膨張し、国防費も大幅な削減を迫られている。アフガニスタンだけで年間1200億ドル(約10兆円)もの戦費を湯水のようにつぎ込み続けることはできない。

オバマ氏が「アメリカよ、今からは国造りに集中していくときだ」と訴えた言葉は、不況に苦しむ国内世論を反映したものだろう。

大統領選挙に向けた日程も、考慮したはずだ。米兵3万3千人が撤退した直後の2012年秋に、再選をかけた大統領選挙が控えている。アフガニスタン戦争は増派を決めた「オバマの戦争」とも呼ばれる。撤退が実現すれば米国民にアピールするはずだ。

だが、この10年間に最も大きな犠牲を強いられてきたのは、アフガニスタンの人たちだ。国連によると、戦闘に巻き込まれて死亡した民間人が先月は368人と、この4年間で最悪を記録した。死者の多くは反政府勢力の仕掛けた爆弾によるものだが、米軍による誤爆も数知れない。人々が治安の回復を実感するにはほど遠い現実がある。

大事なことは、米軍の撤退が内戦の再燃につながらぬよう、交渉を進めることである。米国がカルザイ政権とタリバーン側との和解に前向きになったことは進展だ。タリバーン指導部に影響力を持っている隣国のパキスタンも協力してほしい。

どの国も大きな痛手を負った長すぎる戦争だ。今度こそ本当の出口戦略にしたい。

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