The End of Quantitative Easing: Not Cautiously Solving America’s Economic Slowdown

Edited by Gillian Palmer

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量的緩和終了 米国の景気減速に警戒解けぬ(6月24日付・読売社説)

 米国の景気がもたつき先行きは不透明だ。金融政策の舵(かじ)取りは、一段と難しくなっている。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は、昨年11月から異例の規模で実施した量的な金融緩和策第2弾(QE2)を6月末で終了することを決めた。

 FRBは6000億ドル(約48兆円)もの米国債を買い入れ、市場への資金供給を増やした。景気下支えを狙うとともに、デフレ懸念を封じ込める苦肉の策だった。

 その結果、長期金利が低下して、企業の設備投資の呼び水になった。米株式相場の上昇に伴い、個人消費も持ち直してきた。デフレ懸念も後退している。

 一方で、副作用も大きかった。米国発の巨額マネーが市場にあふれ、原油や穀物などの価格を押し上げた。新興国などのインフレも目立つ。

 FRBが、ひとまず、量的緩和策の役割は終わったと判断したのは妥当だろう。

 今回、FRBは、短期金利の誘導目標であるフェデラル・ファンド(FF)金利については、事実上のゼロ金利政策を据え置き、当面維持する方針を示した。

 金利水準を金融危機前に戻すような「出口戦略」を急げば、景気を冷え込ませ、世界経済に悪影響を及ぼす。金融引き締めのタイミングは慎重に見極めるべきだ。

 問題は、景気回復の勢いが弱いことである。

 米国の今年1~3月期の実質経済成長率は、前期比年率で1・8%に低下した。

 東日本大震災の影響で、日本からの部品供給が滞り、米製造業は減産に追い込まれた。4~6月期も景気低迷が続く。失業率は9%台に高止まりしている。

 景気が一段と減速した場合、FRBが有効な追加策を打ち出せるかどうか。米国の超低金利の長期化は必至だろう。

 だが、これに関連して、円高・ドル安が進んでいることに日本は警戒しなければならない。米当局も輸出に有利なドル安を容認しているようだ。

 大震災に直撃された日本経済はマイナス成長に陥っている。米側の事情によるドル売りで、過度に円高が進めば、自動車などの輸出企業の収益が落ち込む。震災からの復興に冷や水を浴びせる深刻な事態となろう。

 3月中旬に円が急騰した際、日米欧の協調介入で円高に歯止めをかけた。政府・日銀は、市場をけん制し、円高阻止に断固とした姿勢で臨むべきである。

(2011年6月24日01時22分 読売新聞)

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